いよいよ四月。新年度の始まりです。皆さんも人事異動などで大変なのではないでしょうか?しかし、昨夜のタクシーの情報では「ちらほらと花束を持つ人を送ったものの、繁華街に賑わいは無い」とのこと。この不景気では総てが湿りがちとならざるを得ないのかも知れません。
 ただ、昨夕の千鳥ヶ淵の混雑は異常でした。
 東京の桜の名所は車で大渋滞、そのため内堀通り、靖国通り、そしてその裏通りも渋滞してしまいました。取材に遅れたのはこれが原因です。
 しかし、東京の桜はまだ三分から四分咲きです。枝垂れ桜もほのかに咲き初めたところ。まだ、満開にはほど遠い状況で、しかも冷え込も厳しく、指先が冷たいというのに、この有様。桜がなかなか開かず、経済も落ち込むことに対する鬱憤が暴発したためかも知れません。
 
 まずは、お誘いです。
 5月に米国アトランタで開催されるBIO2009に、是非ともご一緒いたしましょう。米国の不況がどれだけバイオ産業に影響を与えているのか?また、中進国や先進国自体の需要創造策によって、バイオ産業の成長がどう影響されるのか?
 世界最大のバイオ会議・展示会BIO2009に参加すれば明白になります。サブプライムの痛手から回復した世界は、今までの製造業資本主義とは違う世界になっているはずです。私たちもそろそろコスト削減だけでなく、次の未来の成長の図を書かなくてはなりません。AIDS撲滅キャンペーンを代表して何とエルトンジョンがスピーチをいたします。この他、多数のゲストにより、欧米ではバイオが社会基盤にもうがっちりと埋め込まれていることを認識させます。
http://convention.bio.org/
 大阪商工会議所が今年も恒例のBIO2009のツアーを募集中です。ジョージア州政府の全面的な支援の下、BIO後の視察も充実しています。私の最大の興味は、CDCの訪問です。感染症対策機関として発足したCDCは今や生活習慣病対策まで、幅広く米国民の健康の脅威を護る砦となっており、尚かつ最近は、その技術や情報を商業化するように変わっております。新型インフルエンザばかりでなく、肥満や糖尿病対策に関しても、ここから新しい智恵が誕生しつつあります。どうぞ下記より詳細をアクセスの上、お早めにお申し込み願います。
 http://www.osaka.cci.or.jp/b/bio2009_mission/ 
 さて、個の医療です。
 3月30日に開催したBTJプロフェッショナルセミナー「統合オミックス」に多数ご参加いただきありがとうございました。300人弱の聴衆で、品川のコクヨホールは満員となりました。しかも、6時過ぎまでほとんど席を立つ方がいないという熱心さです。本当にどうもありがとうございました。
 今回のセミナーで明確となったのは、個々のオミックスの解析精度が向上しつつあり、オミックスによるバイオマーカーによって、病態や患者の層別化(個の医療)が可能となったという事実です。まだ論文発表が進んでいないため注目は希薄ですが、ここに来て、プロテオームやペプチドーム、さらにはたんぱく質の修飾解析によって、疾患と関連するマーカーが続々と発見されつつあります。メタボロームやSNPs解析によっても、同様な成果があがりつつあります。DNAチップによる転写プロファイルの解析はややバイオマーカー探索に置いて比重が下がりつつあることも感じました。
 なによりまず驚いたのが、鬱病のバイオマーカーが発見されつつあることです。最新の実験ですが、国立精神・神経センターの川村氏が今まで不可能とされていた鬱状態のバイオマーカーをどうやら発見した模様です。心理テストなしに、鬱状態の患者とそうでない患者をバイオマーカーだけを頼りに二群に分けることができました。今まで、バイオマーカーの研究の難攻不落の領域と考えられていた精神神経疾患にも、メスが入ろうとしています。現在、プロテオームやメタボロームの研究で、鬱状態を分子レベルの解明に挑んでいます。この件は極めて重要ですので、現在、取材を行うべく準備中です。続報を期待願います。
 今回のセミナーでは、個々のオミックスの研究に加えて、プロテオームやメタボロームの結果を組み合わせることによって、更に医学的に意味のあるバイオマーカの探索に繋がるのではないか?という結論に関しては、誰も異論がなかったことをご報告します。オミックスはそれぞれ生命現象の断面を示しており、複数の断面を見ながら、総合的にバイオマーカーのプロファイルを判断すれば、より病因や病態に迫る情報が得られるというのです。相互のオミックス情報を組み合わせればより医学・生物学的に意味あるマーカーを評価できる可能性も濃厚です。今後のオミックスは一次元ではなく、多次元のオミックス情報の解析により、より精度高い医学情報を得る方向に進むことを確信しました。
 但し、問題は2つあります。
 スタージェン情報解析研究所の鎌谷所長が指摘した通り、単純にオミックスを組み合わせても、統計的に有意なデータを得ることは難しく、統合オミックスの解析や実験そのもののプロトコールには、統計や数学の知識が不可欠であることです。
 第2は、バイオマーカー探索に統合オミックスを研究手段として投入することは必然ですが、その成果を臨床に還す場合に、コストの問題をどう解決するのか?という問題です。これは会場からの指摘があったことですが、今後、ナノテクノロジーの投入による多項目検査のコスト削減とその検査データを患者がポータブルに持ち歩き、無駄な検査を最少にすることである部分は対応できると思います。しかし、エピジェネティックスやメタボローム、プロテオームなど、患者さんの病態や生活によって変動する検査はこの範疇外であり、やはり徹底的な質量分析機の性能向上とコスト削減、そして誰でも使え、解釈できるデータベースの拡充が統合オミックスを臨床検査に普及するためには必要なのではないかと思いました。
 早く、ベットサイド型の質量分析機の開発をわが国は進めるべきだと思います。
 この一週間で、09年度の30兆円とも言われる補正予算の素案が編成されます。国家プロジェクトとして、質量分析機の高度化と普及化のプロジェクトを立ち上げてはいかがでしょうか?まだ、この分野はわが国が勝負できる可能性があります。
 今週もどうぞお元気で。