東京地方裁判所で、東京大学の多比良元教授が、東京大学に対して懲戒解雇を取り下げることを求めた裁判を傍聴してきました。判決は僅か3分でしたが、何と「東京大学の懲戒解雇は解雇権の濫用に当たらない」と認定しました。東京大学の瑕疵は、1ヶ月前の解雇通告がなかったことだけを認定、1ヶ月分に相当する給与の支払いを認めただけでした。思わず呆然です。これは今後の科学に大きな禍根を残す判決となりました。
 東京地裁は昨年、和解を勧告、両者に協議の場を設けましたが、東大側が和解を拒否、今回の判決に至りました。和解は東京地裁が多比良教授側に好意的な証拠と理解していたのが甘かった。多分、こうした高度で科学的で、しかも科学の現場に必要な知識が不可欠な微妙な判断が必要な判決を避けるための和解勧告だったのでしょう。
 まだ判決要旨のみしか聞いていないため、詳細な判決理由の検討が尚必要ですが、今回の判決では論文の責任著者の責任を重視、懲戒は適当だと判断しています。もし、これを文字通りわが国の大学や研究機関に当てはめると、多数の懲戒解雇者を出さなくてはならいのではないでしょうか。多比良教授を訴えたRNA学会関係者にも、捏造疑惑の論文の責任著者と論文の修正・取り下げを行った研究者がいます。責任著者だからというロジックだけでは割り切れない問題です。どこまで捏造防止義務を怠ったのかが、懲戒解雇に相当するかが問われなくてはなりません。
 もう一つ重要なことは、東京地方裁判所が4つの論文が再現性がなかったと判決理由の中で認定しているのですが、これは事実認識として正しいといえるのか?果たして東京大学工学部の調査委員会が行った再現性の確認が本当に再現性がないと言える根拠となるのか?裁判所の見解を、判決理由を読んで確認したいと思っています。工学部の調査委員会には告発したRNA学会の関係者も委員として参加しており、調査委員会の構成自体に問題がありました。
 いずれにせよ、また、このブログでもご報告いたします。
 捏造は当然、科学研究では避けなくてはならないと思います。しかし、こうした画一的な判例と、科学至上主義が、研究の自由や創造性を奪う副作用もあることを、皆さんは知らなくてはならないと思います。
                        宮田 満