明けましておめでとうございます。
 満身創痍のガンバ大阪が、元日のサッカー天皇杯を制した試合をご覧になりましたか。ガンバは本当に良いチームになりました。サッカーの歴史の長い欧州のクラブには、強さ以外に、匂いというか、サッカーに対するプリンシプル(自分達が墨守すべき思いとサッカーのスタイル)を持つチームがあります。とうとうJリーグにも単なる郷土愛だけでなく、このプリンシプルを持つチームが誕生したのではないかと思いました。
http://www.gamba-osaka.net/news/newsrelease.php
 「ハーフタイムのロッカールームはさながら野戦病院のようだった」と西野監督が漏らしたように、JリーグとFIFAクラブワールドカップ(世界サッカーグラブ選手権)の過密スケジュールにガンバの選手の身体はぼろぼろでした。しかし、それでも天皇杯の勝利にこだわったのは、この優勝によって再びFIFAクラブワールドカップの出場権を獲得できるためです。
 先月、現在世界最強のマンチェスターユナイテッドとFIFAクラブワードカップで、5:3でガンバは破れましたが、単なる敗者ではありませんでした。自分達のサッカーが世界に通用するのではないかという希望が胸に灯った敗者でありました。ガンバが国内リーグを超えて、世界に挑戦するチームに変ったのです。
 世界で戦うには、同質なJ1とは異なり、自分自身は何なのかが問われることになります。つまり模倣ではなく、独創性、言葉を変えればプリンシプルが問われることになるのです。ガンバの成長とそれに続くJリーグの成長を今年は期待したいと思います。
 バイオでも勿論、プリンシプルが問われます。バイオの研究開発競争には国境は元よりないからです。
 今までの何もかもが借り物の”なーんちゃってバイオベンチャー”は今、資金供給を断たれて、今年は淘汰の時代に入りました。同時にわが国の金融機関の出身者が「文科系だからバイオなんて分からない」と恥じることなく放言していたベンチャーキャピタリストも淘汰されつつあります。サブプライムバブルの破綻の結果、金融機関はリスクから恥じも外聞もなく逃避しています。あれだけ国民の税金を投入して支えていただいたのに、そうした恩義には一顧だにせず、自己保身のために、中小企業から貸しはがしを行っています。本来投資(直接投資)で研究開発を行うベンチャー企業には影響が少ないはずですが、安易に融資に頼ってしまったベンチャー企業が苦しんでいます。これは自業自得ですが、研究開発が終了、製品を市場に送り出すために資金需要が膨らんだ成熟ベンチャー企業には大いなる痛手となります。製品製造・販売のための運転資金を銀行から融資してもらえず、売り上げが立たない深刻な状況にあるためです。
 技術突破は成就したのに、倒産の危機に瀕しています。わが国の金融機関が目利き力を失い、信用創造力を放棄したためです。
 臨床試験に入ったバイオベンチャー企業も、ベンチャーキャピタルからの投資を得られないために難渋しています。むしろこうした企業は、経費が膨らんでいるために、資金ショートまでの残り時間は非常に短いきわめて厳しい状況にあるのです。
 米国でも年金などが、リスクよりの逃避を始めているため、潤沢だったベンチャー投資資金も減少(決して日本のように枯渇ではありません)しています。しかし、今が投資のチャンスだと考える投資家も存在し、ウォーレンバフェットのように、ダウケミカルやGE、ゴールドマンザックスなどに巨額の投資を行っています。同氏は中国の電気自動車のベンチャーにも投資しました。日本のように一斉に投資が断たれることは無いのです。日本の金融分野には自分の頭で考え、実行できる投資家は極めて少ない。そのため、サブプライムが破綻すれば、もう駄目だと貝のように閉じこもり、ひたすら経費を削減し、我慢しかないのです。これではわが国はジリ貧になるだけです。
 日本のリーディングバイオベンチャー企業も、海外での臨床試験をスローダウン、巣篭もり状態に入りました。
 しかし、あえていいますが、2009年こそ、逆張りする年だと思います。投資の常識からすれば、今年はバイオが最も投資効率の良い時期になったのです。
 今や離陸寸前となったわが国のバイオベンチャー企業をきちっと選別、世界と競争できるバイオ企業に資金を注入し、研究開発や製品開発を支援し、上場や企業売却を促す必要があります。今や氷河期に入った新興市場が機能しないなら、シンガポール市場やシドニー市場などへの上場も視野に入れるべきでしょう。昨年11月にトランスキュー・テクノロジーがシンガポール市場にリバースIPOで上場しました。これはシンガポール証券取引所の勧めに応じたものです。シンガポールの金融担当者は今や世界中から技術力のあるベンチャー企業の上場させるため、担当者を世界に派遣しています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7846/
 今年はサブプライムバブル破綻を予測していた訳ではありませんが、わが国政府は幸運にも産業投資特別会計から出資して”イノベーション創造機構”を創設します。民間資金(これが確保できるかが第一の関門)と合わせて、バイオベンチャーなどへ投資するファンドを創生します。これを活用して、何とか優良ベンチャー企業を上場もしくは売却可能になるまで成長させ、既存のバイオベンチャー企業に塩漬けとなっているベンチャー投資資金を回収し、再投資のサイクルを蘇らせなくなくては、わが国に未来はありません。全力で、しかも迅速に取り組むべき最優先課題です。しかも、今回は今までの産業投資特別会計の轍を踏まず、投資実績にあるベンチャーキャピタリストの参画が不可欠です。キャピタリストと表現したのは、会社の実績ではなく、個人の才覚が重要だからです。未来を診る個人の勝負だからです。歴史の変曲点にある今は集団による従来の外挿による判断は誤る確率が高いためです。
 果たして集団主義そのものの政府がこうした英断を行えるか、是非とも注目しなくてはなりません。今までの単純な企業再生などの経験はバイオでは勿論通用いたしません。サッカーと同じく集団のプリンシプルも重要ですが、最後の勝負は個人の才能と努力に委ねるべきなのです。製造業資本主義と知識資本主義の本質的な差であります。
 今年もバイオインダストリー協会と一緒に、わが国最大のバイオ展示会・シンポジウム、BioJapan2009を横浜で10月に開催します。テーマは「バイオ再興元年」。 皆さんと一緒に、わが国のバイオ産業再興の狼煙をあげましょう。是非ともカレンダーにマーク願います。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/
 もう一つ、今年のバイオに追い風が吹いています。
 サブプライムバブルの落ち込みから世界を回復させるためには、更なる技術革新と、発展途上国や中進国の経済拡大が重要です。これから基軸通貨を印刷できる米国や投資余力のある中国政府が需要を喚起するためニューディール政策を行うでしょう。欧州各国、そして的外れで遅いですが日本も財政出動する計画です。
 焦点はどこか。それは間違いなく、高齢化が進む先進国と中進国では医療・保健、そして全世界的には環境が、新たなニューディールの焦点となります。米国では06年からグリーンバイオやホワイトバイオのベンチャー企業に対して、ベンチャーキャピタルが投資を急増させています。まさに、1980年代のバイオの熱気の再現でした。種はもう仕込まれています。
 加えて、どうやらバイオに技術革新の第三の波が押し寄せています。
 次世代、第3世代DNAシーケンサーや質量分析器、iPS細胞などの技術革新、エピジェネティックスや機能性RNA、バイオマーカー研究も急速に進展しています。どうやら21世紀は10年間隔でバイオの技術突破が続きそうです。半導体のムーアの法則のように、DNAシーケンサーの性能向上がバイオの技術革新の波のエンジンとなるでしょう。
 こうした技術革新を社会に貢献させ、起業し、雇用を増大させるか?
 大学・ベンチャー・大企業・金融・市場・規制(政府)の円滑な連携を再構築するのがわが国の課題です。
 皆さん、そろそろ蛸壺からはい出て日本のために発言・行動いたしましょう。
 Biotechnology Japanでも、オピニオンリーダーたちが新春を展望し、意見を寄せていただいています。どうぞ下記よりご覧願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/