現在、福岡の国際会議場で日本動物細胞工学会の第21回国際会議に参加しています。
 
 現在、iPS細胞のセッションですが、世界中でiPS細胞やヒトES細胞の研究が進んでいます。昨日はポルトガルのグループがヒトES細胞の大量培養技術を発表し、ブラジルの研究者がパーフュージョン培養を発表するなど、先進国だけでなく中進国の研究者も積極的にこの分野に参入してきています。
 残念ながら我が国ではiPS細胞という技術突破を世界に先駆けて行っていながら、これを世界に普及するための工学的な研究が進んでいるかというと、極めて疑問です。細胞の標準化、そしてコストエフェクティブな大量生産システム、さらに再生医療にも応用可能な細胞を、供給するGMP生産システムの開発を急がなくてはなりません。
 
 11月26日の今年最後のBTJセミナー「再生医療成功の鍵」を企画したのも、こうしたiPS細胞の工業化研究を刺激することも目的です。そのためにも、09年1月に保険適用される可能性が濃厚となってきた、世界で最初に規制当局から商業化を認められた再生医療から学ぶ必要があると思うのです。
 
 今回は自家培養皮膚のGMP生産の商業化に成功したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの経験を取り上げて、再生医療の産業化の鍵は何か議論いたします。勿論、鍵を握っていた医療機器としての適格性を精査した規制などについても議論いたします。
 
 さて、福岡の国際会議のもう一つの焦点だったのは言うまでもなく、CHO細胞の大量培養による抗体医薬の製造方法の改良でした。今回は抗体医薬のトップ企業である米Genentech社の研究者も来日、取材することに成功しました。同社に加えて協和醗酵キリンも、スケールダウンを問題にしていました。
 
 スケールアップではなく、スケールダウンであるところがみそです。
 
 実は、組換え抗体の製造方法の鍵を握るのは、どの組換え細胞株を工業生産に利用するのか? という選抜方法にあります。多数の組換えCHOクローンから工業生産に最も適合した株を見出すのは簡単ではないのです。しかも、いちいち2リットルのスケールまで培養をするのも、時間も費用もかかり不可能です。
 
 この問題を解決するために、24ウェルのプレートを活用し、しかも細胞数や抗体の生産性を自動計測して、細胞選抜を最適化しようというのが、Genentech社や協和醗酵キリンなど最先端の抗体医薬企業の狙いでした。詳細は、日経バイオテクオンラインで報道いたしますので、どうぞ楽しみにしてください。
 
 Genentech社は現在、新しい抗体医薬の製造・開発施設を拡張中ですが、その住所はなんと、1 Antibody Way ,Oceanside, CA92056。全く恐れ入りました。抗体通り1番地とはまったくGenentech社らしい。ウェブサイトでもwww.gene.comを確保した同社ならではのパイオニア精神と子供のような貪欲さに、我々も対抗しなくてはなりません。
 
 現在、高崎市に協和醗酵キリンは抗体工場を建設中ですが、是非とも抗体盆地1番地ぐらいの名前をつけて見てはいかがでしょうか?
 
 明日、BTJプロフェッショナルセミナーの会場で、お会いすることを楽しみにしております。
 
PS 
 バイオビジネスコンペJAPANの締め切りが11月28日金曜日まで延期されました。
 
 賞金総額1000万円を越える我が国最高のビジネスコンペが、今年はあなたにもチャンスがあるかもしれないということです。
 
 ポイントは科研費の申請では無く、皆さんの技術シーズに基づいたビジネスプランだということです。どこにアンメットニーズがあり、この技術なら事業の関門を突破でき、新たな市場を開けるというった展望を簡単におまとめ願います。
 
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