来年1月には我が国でもいよいよ究極の個の医療である、自家培養皮膚の保険収載が成される可能性が濃厚となりました。いよいよ国民皆保険の我が国の医療制度でも、患者さんから採取した皮膚の上皮細胞を体外で急速培養して、再移植する治療が実用化します。但し、重症熱傷が当面は適応対象です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7765/
 蒲郡のベンチャー企業、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが自家培養皮膚「ジェイス」の実用化を推進いたしました。世界でも例を見ない、GMP対応で自家培養皮膚の製造施設を設立、稼動させています。08年11月18日に開催した同社の09年3月期第2四半期の決算発表で、小澤洋介社長は自家培養表皮「ジェイス」が、「09年1月付けの保険収載を期待している」と発現しました。
 前例の無い技術革新ですのすべてが手探りでした。Harvard大学のGreen教授の開発した基盤技術(NIH3T3細胞のフィーダーとして培養する技術)を工業技術までに、洗練させました。実際、培養皮膚のGMP製造には当初の建設した培養施設では対応できず、新たにGMP対応の工業製造施設を実は作り直したほどです。
 また、許認可に関しても、医薬品・医療機器総合機構とのコミュニケーションを通じて、双方がこの技術革新に関して、共通した認識を持つ時間が必要でした。はたから見ているともたもたしているように見えましたが、米国食品医薬品局ですらジェイスの認可後、まったく同じ技術で製造されている米Genzyme社の「Epicel」を認可したほどですから、規制当局の慎重さの壁は容易ではありませんでした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/8013/
 ジェイスの実用化にはもう一つ大きな壁がありました。
 保険収載の壁です。
 ジェイスは、重症熱傷の治療用に07年10月29日に正式に厚労省から販売承認を受けました。11月に同省に対して保険適用希望書を提出しましたが、1年経った現在でも保険収載を認められていません。異例のことですが、保険収載のために08年6月に厚労省から追加症例を求められたのです。同社は重症熱傷患者に対して改めて自家培養表皮を提供、培養表皮の生着率などを検討し、数症例の追加資料を9月に厚労省に提出したところです。
 ジェイスも発売後の症例登録と全例の追跡調査を義務付けられています。安全性や有効性はこの市販後調査でも確認できるでしょう。そのため、今回の追加症例は保険薬価(診療報酬も)の妥当性を吟味するための資料らしい。いずれにせよ、実用化に向けて一歩前進したことは間違いないでしょう。厚労省や保険収載を検討する関係者は、こうした真摯な努力と患者さんのニーズを勘案して、一刻も早く、再生医療実用化の扉を開けるべきだろうと確信しています。
 今後、自家培養皮膚は適応症を拡大していきます。さらに、自家培養軟骨や角膜の実用化もジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが迫っています。09年1月に自家培養皮膚が保険収載されれば、こうした再生医療の実用化が一挙に広がります。
 米Pfizer社が再生医療に今月進出、再生医療の研究部門を設置したという情報も流れてきました。自家培養という第1世代の実用化を越えて、他家培養、そして胚性幹細胞、最終的にはiPS細胞まで、再生医療の技術革新は進んでいく見通しです。再生医療は高齢化によって生まれる最大のアンメットニーズである、という認識が重要です。今後の発展を期待したいところです。
 我ながら最高のタイミングだと思いますが、11月26日、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの後援を得て、再生医療産業化の鍵を議論する今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーを品川で開催いたします。ジェイスの成功の鍵を議論し、iPS細胞のGMP生産までを議論いたします。
 低分子だけに拘泥していると、出遅れた抗体医薬の二の舞となりますぞ。
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/081126/
 再生医療の未来は若者が切り開きます。スポンサーのご厚意で、学生、大学院生、ポスドク、助教までを無料招待いたします。下記のサイトの学生受付よりお申し込み願います。
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 皆さん、品川でお会いいたしましょう。
             
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 糖鎖研究の進展も我が国で世界と競争力のある大切な技術です。
 12月3日から4日、品川で開催される糖鎖科学フォーラムも注目に値します。
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