バイオ年鑑の原稿が、やっとできました。
 今朝8時まで完全徹夜を自慢する訳ではありませんが、久しぶりに頭の中身をぎゅっと絞って、脳みそがおからになった気分です。疲労が油のように溜まり、眼もしばしばしておりますが、何故か、清々しい気分です。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2007110150430
 しかし、ニュースを求めて東奔西走しておりますが、情報の断片を繋ぎ合わせて見ると、バイオ産業が07年から新たな段階に入りつつある大きな絵が見えてきます。不動産のように全世界の金余りの状況で左右される他動的な産業とは異なり、あくまでも技術革新がドライブする能動的な産業がバイオ産業だということです。
 他動的な産業では今までのドル余りの状況が、サブプライムローンのバブル崩壊で一転し、資金の引き上げがあるともうその産業はひたすら収縮せざるを得ません。米国政府が支援した巨大な保険会社が、銀座の資産を半額で切り売りしているという噂も流れています。人口は減少しつつあり、しかも先端産業の振興に成功した訳でもない日本の不動産価格が上昇するのは、余りにも人為的なマネーゲームでした。今後も暫くは不動産関連企業の倒産は続くだろうと思います。
 では、米国の過剰消費に依存した製造業はどうだったのか?
 どうやら製造業にも2種類あると思います。第一は今までにない商品を開発する価値創り企業と、第二は従来の商品をひたすらコスト削減し供給する物作りの企業です。
 価値創り企業はそもそも市場の満たされないニーズに商品を供給するため、経済の動向やバブルの崩壊の影響をほとんど受けない安定した企業です。しかも製品の価格を決定することが出来る優位な立場を取れます。バイオ産業の中核となる医薬や環境・エネルギーには、価値創り企業を排出できる可能性があります。
 しかし、一方の物作り企業は、輸出先や製品を消費する地域の経済状況をもろに影響を受けますし、しかも世界が統一市場になるに従って、発展途上国からの参入が常にあり、しかも、米国のバブル崩壊が自社の業績に決定的な影響を与えるなど、世界中のリスクを背負う経営となってしまいます。昔は米国市場が低迷しても、欧州や東側諸国、発展途上国など余り相互に依存しないブロックが存在し、地球経済の安定化の一因になっていたのですが、インターネットによって情報の国境が失われ、世界統一市場となった今では、逆に相互依存によって米国のバブル崩壊がドミノのように各国の経済を破壊する連鎖リスクを高めてしまったのです。
 世界は多様性を保持しなければ安定しない。結局は突然変異や適応現象などによって、生物が多様性を増大させ、地球上で生命の安定を保つ仕組みを創り上げていますが、その知恵を再び学ぶ必要があると思います。
 「当社(Inperial Chemical Industrym、ICI)はコモディティを生産していたため、世界中の景気に経営が結局は左右されていた。実際、世界の景気動向を予測するアナリストを何人も抱えて、世界経済を分析、受動的に経営してきた。しかし、経営陣のビジョンよりも世界の景気動向が企業の収益を決めるこの構造は健全ではない。従って、今後、技術革新が起こり、当社が生み出す知恵によって収益を自分で確保できる業態に転換する」

 自社を分割、一般化学品を販売する部門を売却し、生命科学企業Zeneca社を設立する前年に、Londonを訪れた時に、ICIの経営陣が言った言葉をいまさら思い出します。当時はまだ正直、私には理解できなかった。
 大きいことは良いことだと、製造業資本主義に毒されていた私には、このICIの経営陣の決断は当時は理解不能でした。しかし、今なら良く分かります。自分達の知恵や技術革新による価値創造で、企業の成長を実現する、知識資本主義の新しい企業へと、1926年に創設された賢い老舗企業が自己変革をしたのです。
 結果は明白で、スウェーデンのAstra社と合併してAstraZeneca社はビッグファーマの上位5社に常にランクインする隆々とした企業へと成長しています。
 バイオ年鑑を書いてみて、実感したのですが、2007年はバイオテクノロジーに再び技術突破が起こった年だったと思います。ヒトiPS細胞、次世代シーケンサー、GWAS、エピゲノム計画、1000ゲノム計画、グリーンバイオなど、新しいバイオ産業を生む技術革新の波が押し寄せています。
 今はどん底かも知れませんが、この技術革新の波に乗れれば、再び繁栄を享受することも夢ではないと思います。
 さて、最後に今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーの案内です。
 再生医療の我が国初の実用化の例を徹底的に解明いたします。製薬企業、医療機器関連企業だけでなく、バイオ支援産業、そして研究者や医療関係者にも必見です。自家細胞移植からiPS細胞まで、細胞を産業化・商業化することはどういうことなのかを議論いたします。
 11月26日、品川で、今回はとうとう実用化にたどり着いた再生医療の実態を議論いたします。果たして再生医療の産業化はどう進むのか?産業化の鍵を握る技術やビジネスモデルは何か? 今回は世界で初めて培養皮膚を実用したジャパンティッシュエンジニアリングの全面支援で、実用化の詳細を皆さんに開陳いたします。再生医療のGMPとは何か? このセミナーで一目にして理解できます。
 さらに未来の鍵を握るiPS細胞研究の山中伸弥教授の協力により、研究室で培養を担当している研究者の講演もあります。最後には恒例のパネルディスカッションも、規制関係者もお招きして実用化の展望を議論いたします。
 どうぞ詳細を下記よりアクセスし、お早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/081126/ 
 
今週も良き週でありますように。