気がついたら、金木犀の花も終わり、スズカケの木が枯れ葉を散らす冬がやってきました。
 
 現在、恒例のバイオ年鑑2009を執筆中です。髪の毛を振り乱すほどありませんが、それでも寝食を忘れ、この一年間に起こったバイオ関連のニュースをウェブ上のデータベースに突っ込み、ぐつぐつと煮詰めている最中です。
 一体、今年のバイオはどんなであったのか? 
 
 日常の現場取材で個々の情報の断片をかき集めても、結局は全体が見えない。苦しい作業ですが、今まで収集した情報をつなぎ合わせることで、明日のバイオが見えてきます。実際の作業は、データベースが綺麗になるまでは、暗夜行路のようでまったくストレスが溜まります。余りに集中しているため、季節の移り変わりにも気がつかず、歳を重ねる結果となります。どうぞ日経バイオテクの編集部全員がうんうん言いながら創り上げた、日経バイオ年鑑2009をご購読願います。ここには現在と未来のバイオ産業の姿と市場が提示されています。バイオ関係者必見の書、とここは力んで申し上げます。下記のサイトよりお早めに、早割もあります。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2007110150430 
 
 
 年鑑の友として深夜番組は欠かせません。
 
 DBを整理しながら、プレミアリーグの北ロンドンダービー(アーセナルVSトッテナム・ホットスパーFC)の試合をだらだらと見ていましたが、これがもの凄い点の取り合いとなる好ゲームでした。4:4で引き分け。しかも、何故かトッテナム・ホットスパーFCが後半ゲーム終了間際に大反撃し、とうとうロスタイムに追いつかれ大好きなベンゲル監督もさぞやがっくりしたことでしょう。アーセナルは若く才能の溢れるチームですが、トッテナムの本当に泥臭い迫力に木っ端微塵にされてしまいました。これだからサッカーは面白いのですね。
 
 さてバイオです。
 
 まるで枯葉のように外資系の研究所が筑波から撤退、とうとう最後の万有製薬(米国Merck社)の筑波研究所も2009年末に閉鎖が決まりました。今年、社長が日本人から外国人に急に変わったので、いつか研究所を閉鎖するだろうと予測した通りの展開となりました。既に、グラクソスミスクライン、ノバルティスが研究所の閉鎖を行いましたので、筑波にはエーザイとアステラス製薬の研究所がぽつんと取り残された格好です。
 
 萬有製薬の筑波研究所は、世界のMerck社の研究所で最も生産性(つまり新薬のリードを最も多く開発した)の高い研究所でした。それでも、今やビッグファーマはあたかも熱病に罹ったように、日本から去り、上海やシンガポールに研究所を開設しています。「私は反対した」とNovartis社のコーポレイト研究のトップであるPaul Herrling氏は、先週香港で答えましたが、日本市場が国際的に縮小しており、今後の急速な市場成長が望める中国には勝ち目が無かったとも。ビッグファーマの研究資源の配分にも、今後の製薬市場の動向や国家的な支援という上げ潮感が、実績よりも重視されることを忘れてはなりません。
 
 先月、横浜で開催されたBioJapan2008のファーマサミットでも、第一三共の庄田社長も「ビッグファーマの研究所が日本から撤退することにより、日本の創薬力が低下すると懸念、何とか我が国の生命科学や医学、臨床環境などを底上げしなくてはならない」と危機感をあらわにました。ファイザーも、そしてバイエル、シェーリング、オルガノン、ヘキスト(サノフィアベンティス)も日本を去りました。
 
 萬有製薬の筑波研究所の閉鎖により400人の雇用が宙に浮くことがだけが問題なのではない、と私も思います。職を失う方は本当に大変ですが、これは他人事ではありません。もっと深刻なのは、今や強力なライフサイエンスのスポンサーと強力なグローバルな研究ネットワークを提供するビッグファーマが日本から去ることによって、日本の生命科学や医学研究の過疎地化が進むことことなのです。
 
 情報や人材交流が閉ざされた極東の島国で何が起こるのか? 
 
 今や日本の家電製品や携帯電話で言われている「ガラパゴス化」が、バイオや創薬でも加速するのではないでしょうか? 日本の携帯電話のようにやたら高機能で誰も使わない機能ばかりを充実、世界市場には売れない自己満足商品(これを時々、物づくりの伝統と誤解する人も多い)を製造し、結局は世界市場で存在感を失うガラパゴス化が、バイオでも進む嫌な予感がいたします。
 
 世界に貢献するためには、世界を知らなくてはなりません。そのための出島のような機能を果たしていた海外の製薬企業の研究所がを失うことは決定的です。国内におりながら、グローバルな情報と人材へのアクセスを得られる貴重な場所を失います。また、就職を通じて、研究者がグローバルなキャリアを積む機会も細ってしまいます。
 
 唯一の希望は、医療産業都市構想を進めている神戸のポートアイランドに、08年10月、ドイツのベーリンガーインゲルハイムが研究所を移転したことです。再生医療やiPSなど、我が国が国際競争力のあるクラスターにはまだまだ多くの海外企業の研究機関を引き付けることができるのではないかと、少しだけ明るい気持ちとなります。何とか、我が国に海外の頭脳を呼び戻すことに、国も自治体も、大学も病院も、そして私達も努力しなくてはなりません。安住や引きこもりこそ、ガラパゴス化の最大の原因です。
 
 さて、最後に今年最後のBTJプロフェッショナルセミナーの案内です。
 
 11月26日、品川で、今回はとうとう実用化にたどり着いた再生医療の実態を議論いたします。果たして再生医療の産業化はどう進むのか? 産業化の鍵を握る技術やビジネスモデルは何か? 今回は世界で初めて培養皮膚を実用したジャパンティッシュエンジニアリングの全面支援で、実用化の詳細を皆さんに開陳いたします。再生医療のGMPとは何か? このセミナーで一目にして理解できます。
 
 さらに未来の鍵を握るiPS細胞研究の山中伸弥教授の協力により、研究室で培養を担当している研究者の講演もあります。最後には恒例のパネルディスカッションも、規制関係者もお招きして実用化の展望を議論いたします。
 
 どうぞ詳細を下記よりアクセスし、お早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/081126/ 
 
今週も良き週でありますように。