シンクロナイズドスイミングはわが国がオリンピック競技になって以来、一回も欠かさずにメダルを取得した数少ない競技です。「メダルは私たちの使命です」と、あんなに美しい選手がまるで軍隊のように決然とインタビューに答えるほど、決意に溢れいます。それを脅かしているのが中国チーム。デュエットの演技では、僅差の4位につけ、激しく追い上げています。
 何故強いか? コーチを日本から招聘したことに加え、なんと一卵性双生児のデュエットを北京五輪に向けて育成して来たためです。遺伝的背景がまったく同一のチームが勝つか、日本の伝統が勝つか? 個の医療という観点からも、絶対面白いと思っております。
http://beijing.yahoo.co.jp/news/pdetail/20080818-20080818_1420-reu.view-000
http://beijing.yahoo.co.jp/news/pdetail/20080818-20080818_1421-reu.view-000
 さて、やや強引でしたが、個の医療です。
 いよいよ国際的な新薬の開発で民族差に注目した臨床研究を行う病院が、わが国にも出現しました。民族差は、詳細に解析して見れば、生活習慣と遺伝的な多様性に帰着します。言い換えれば、個の医療に組織として正対して臨床開発に着手する病院が、現れたということです。私が知る限り、日本初、まさに個の医療の実現にとって画期的な出来事だと思います。
 8月18日、静岡県がんセンターと英国AstraZeneca社の日本法人、アストラゼネカ株式会社と、抗がん剤の開発で、基礎研究からフェーズ1に至る臨床研究に関して包括的な契約を締結したのです。
http://www.pref.shizuoka.jp/scchr/astrazenecahoukatsukeiyaku.html
 日本人及びアジア人に有効な抗がん剤を、アストラゼネカのパイプラインや前臨床化合物を評価して、選択、静岡県がんセンターでいち早く、臨床上の評価を行うトランスレーショナル研究を行います。日本人やアジア人に有効性が高いかどうかを、アストラゼネカと静岡県がんセンターが共同で評価することがポイントです。
 これによって、日本人やアジア人に有効な抗がん剤の臨床開発を加速することが狙いです。薬剤の選択が終了後、本格的な新薬の臨床研究を行う場合は、新たに静岡県がんセンターとアストラゼネカが新薬臨床試験の契約を個別の薬剤毎に締結することで合意しています。
 アストラゼネカは肺がんの治療薬「イレッサ」(ゲフェニチブ)で学んだのです。結局この医薬品はアジア人及び日本人に有効なエスニック医薬として実用化されました。欧米では有効性が証明できなかったのです。
 その後の研究で、イレッサの標的である上皮細胞成長因子受容体の突然変異型を持つ患者に有効性が高いことが分かり、こうした変異型を持つ人の割合がアジア人や日本人に高かったことが明らかになりました。
 国際臨床試験が叫ばれていますが、循環器疾患や高脂血庄の治療薬ならともかく、抗がん剤のような作用機構が明確な標的医薬になればなるほど、対象となる市場の患者の遺伝型の頻度に、効果や副作用が支配されることになる現実を、アストラゼネカは認識していました。
 本当に国際的な抗がん剤にはローカリティ(地域性)があるという同社の認識は、今後の国際的な新薬の開発の背骨となるものです。
 しかし、保守的な病院の多い中で、静岡県がんセンターは良く踏み出しました。これによって、同病院は日本の、そしてアジアの抗がん剤の開発のセンターとして大きな重みを加えたと思います。是非とも頑張っていただきたいと願います。
 今週も皆さん、お元気で。
PS
 iPS細胞が出来るのはエピジェネティックスの変化が鍵を握っています。

 急速に進むエピジェネティックスの研究も注目下さい。無料のBDFマガジンBTJJでも取り上げていますので、合わせてお読み下さい。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/