写真:国立長寿医療センター。取材後、名古屋で手羽唐で一杯やりながらインタビューしているうちに、豪雨で新幹線が1時間も遅延。時、既に遅し。待合室でなでしこジャパンを観戦、引き分けでほっとする。
 現在、久々のひかり号で、名古屋に向っております。
 
 名古屋に向っている理由は、米国Chicagoで開催されていた国際アルツハイマー病学会から帰国した、国立長寿医療センター研究所の田平所長にインタビューが取れたためです。
 前々回のBTJ/HEADLINE/MAILで書きましたが、Lancet誌にAβ(アミロイドβ)42 のワクチンは、確かに患者の脳のβアミロイドの蓄積を減少させたが、認知能力の改善と寿命の延長には貢献しなかったという論文が出ました。
 これは副作用のために中断されAβ42ワクチン、AN-1792の臨床試験フォローアップで明らかにされた結果で、説得力があります。
 先週、米国で開催されていた国際アルツハイマー病学会で一体、どんな議論や雰囲気であったのか? 興味深深です。
http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/2008/07/185466.html#more
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http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/btjh/index.html
 「果たして、アルツハイマー病の原因がβアミロイドの蓄積にあるという仮説が崩れたのか」。田平所長にお尋ねしたいと思っております。詳細はBTJで報道いたしますのでご期待願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/
 さてこうした事情を踏まえた上で、個の医療のトピックスをお伝えいたします。
 08年の国際アルツハイマー病学会の最大の話題は、7月29日にアイルランドのElan社と米国Wyeth社が共同で行っている抗アミロイドβ抗体医薬、AAB-001 (bapineuzumab)のフェーズII臨床試験の結果でした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4933/
 AAB-001を軽症から中度のアルツハイマー病患者に投与した臨床試験の結果でした。
 残念なことに、被験者全員を対象とする分析では、偽薬群と比較して、認知9能力(ADAS-cog、DAD)の改善に変化に有意な差は認められなかったという結果です。
 関係者一同のため息が聞こえるようです。
 但し、統計的には有意ではないが、投与群の方が認知能力が改善した傾向は認められました。
 だが、希望は残っています。アルツハイマー病の罹病確率を高めるリスク遺伝子として知られているApoE4遺伝子を持つ患者群と持たない患者に分けて分析したところ、ApoE4遺伝子を持たない患者では、AAB-001の投薬で統計学的に有意に認知能力の改善が認められたのです。しかも、MRI検査で脳の萎縮が有意に抑止できることも確かめられました。
 さらに、βアミロイドが血管周辺にも沈着することから、AAB-001の副作用として、血管原性浮腫が懸念されていました。臨床試験は234人の軽症から中程度のアルツハイマー病患者を2群に分けて、抗体医薬と偽薬を投与しました。12人の患者に血管原性浮腫が発生、うち10人がアポE4遺伝子を持っていたのです。
 もしこの臨床試験が正しいならば、ApoE4遺伝子が抗体医薬AAB-001を投薬する対象患者の選択に有用であることを示しています。アポE4遺伝子を持たない患者さんは、抗体医薬で治療効果が期待でき、尚且つ副作用も少ないかも知れないのです。
 現在、両社はフェーズIII臨床試験を全世界で展開中であり、今回の臨床試験フェーズIIの結果は、フェーズIII臨床試験に反映させるとコメントしています。つまりApoE4の遺伝子型の鑑別が行われるということです。
 9月にWyeth社の研究開発のトップが来日いたします。そこでもAAB-001の臨床結果は、取材の中心となると思います。
 アミロイドβの蓄積がアルツハイマー病の原因なのか? 単なる結果なのか?
 ここ1週間一喜一憂しております。現状では少なくともApoE4を持つ患者さんに関しては、アミロイドβの蓄積量の減少が、治療効果を期待できるかも知れない、ということに落ち着きそうです。
 抗体医薬、ペプチドワクチン、そしてβアミロイドの前駆体からβアミロイドを切り出すγセクレターゼとβセクレターゼ阻害剤などの臨床開発でも、ApoE4遺伝子を目安にした個の医療が検討される可能性濃厚です。
 最後に2つのお願いです。
 第一は、9月2日に東京で開催するBTJプロフェッショナルセミナーへのお誘いです。iPS細胞の技術突破によって、今や大きく細胞生物学が変貌しつつあります。また、こうした人工万能細胞や遺伝子導入による細胞分化の操作によって、創薬や安全性評価、そして最終的には再生医療などに技術革新が起こると確信しております。
 今回のセミナーは、ずばり細胞に遺伝子導入をし、細胞操作する基盤技術がどこまで進んでいるのか? その最先端を網羅しようとしております。今回は、細胞生物学に技術革新をもたらすInvtrogen社の協賛を得て、皆さんの研究を革命的に変える細胞操作技術を議論いたします。どうぞ下記より詳細にアクセスの上、お早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/080902/
 第二は10月に横浜で開催する我が国最大最良のバイオ会議・展示会のバイオジャパン2008へのご参加の勧誘です。今回も国内外から有力講師を招聘し、明日のバイオを示すセミナーを開催いたします。今年はバイオプラスチックなどの環境バイオに加え、抗体医薬、RNA工学、ポスト抗体医薬、標的医薬、再生医療、ベンチャーやクラスター振興策など、今取り上げ議論すべきバイオ産業のトピックスを総覧いたしました。ちょうどセミナーの予約受付を開始したところです。どうぞ下記より詳細にアクセスの上、お早めにお申し込み願います。https://biojapan2008.com/public/application/add/37?lang=jp
 加えて、バイオジャパンでのミーティングを効率よく進めるために不可欠なマッチングシステムにもご登録願います。開始したばかりですが、すでに100 社以上が登録、有力なシーズや企業提携のチャンスを提供しています。今後、続々と登録数が増えれば、皆さんに最適のパートナーを見つけることができる確率が増大します。皆さんもどうぞご登録願います。世界のどこかから、未来のパートナーがメールしてくるかも知れません。以下をご参照下さい。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/matching/index.html
 今週も炎暑です。皆さん、どうぞご自愛願います。少しはゆっくりいたしましょう。