写真:久しぶりの東京の夕焼け。
 先週の末に神戸で日本臨床分子医学会を取材しておりましたら、「君が良いと言っていた、Aβのワクチンは確かにアルツハイマー患者のβアミロイドの蓄積は減少させるが、痴呆の改善や寿命の延長とは無関係だという論文が今週のLancetに出ていたぞ」と自治医大の高久学長から指摘を受けました。ご丁寧にメールで論文までお送りいただき、ひたすら恐縮しています。
 確かに、アイルランドのElan社と米Wyeth社がアルツハイマー病患者の脳に蓄積し、神経に毒性を示すAβ42ペプチドを抗原として、アルツハイマー病の治療用ワクチン(AN1792)の臨床試験を行っておりました。しかし、フェーズII臨床試験の段階で、6%の患者でT細胞性の脳炎が発症、2003年に臨床試験は中断されました。今回の論文は、生存者80人を対象に2003年6月から2006年9月までフォローアップした結果を解析したものでした。
 フォローアップの中間解析では、不幸にも死亡した患者の解剖の結果、脳内にはβアミロイドの蓄積が完全に無くなっていた。また、生存者の認知機能が、血中のAβに対する抗体価が高いほど改善した、といった極めて良好な報告が相次いでいました。
 その結果、「Aβワクチンの臨床効果に関しては証明(Proof of Concept)が得られた」と世界の製薬企業が殺到することになったのです。臨床試験で一度挫折したElan社・Wyeth社も、Aβに対する抗体医薬のフェーズIIIに着手していることに加えて、T細胞性脳炎を引き起こさないワクチンの開発にも着手しています。スイスNovartis社は既にAβ42ペプチドのN末9つのアミノ酸ペプチドがB細胞だけを刺激する抗原決定部位であることを突き止め、現在、スウェーデンでフェーズII臨床試験に着手していました。
 受動的(抗体医薬)、もしくは能動的(ワクチン)な免疫によって、アルツハイマー病の患者の脳内に蓄積しているβアミロイドの量を減らせば、この病気は治療可能だという楽観的確信を私も含め、みんなが持っていたのです。
 本当にこれが臨床試験の難しいところです。
 2006年9月までのAN1792のフォローアップ調査を解析した結果、確かにアルツハイマー病患者のβアミロイドの蓄積量はワクチン投与群で、2.5分の1に減少していました。免疫によってβアミロイドの蓄積量が減ることは事実でした。
 しかし、悲劇だったことは、寿命延長や痴呆の進行抑止には、βアミロイドの蓄積量とは無関係であったのです。「POCが取れた」と思ったのは、今回の結果に限って言えば、早合点だったということになります。詳細は下記の論文をアクセス願います。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673608610752/abstract
 実はこの論文のコメントをいただくために、国内の研究者に連絡を取ったところ、主要な研究社は米アルツハイマー協会が主催する国際シンポに参加中でありました。一体この論文を受けて、どんな議論がChicagoで巻き起こっているのか、興味津々です。続報いたします。 
http://www.alz.org/icad/about_icad.asp
 まだ夏の入り口です。しかし、もうばてばてです。
 運動がアルツハイマー病の進展を抑止するという論文もありますが、今はお勧めいたしません。
 皆さん、どうぞご自愛願います。
 PS
 バイオジャパン2008で未来を開くパートナーと会おう。 今から無料登録し、コミュニケーションを開始しよう。 10月に横浜で開催する我が国最大のバイオ展示会・シンポジウム「BioJapan2008」のマッチングシステムを稼動させました。狙いは個人情報を保護しながら、当然主催者にも個人情報はタッチできません、共同研究やライセンス、ひょっとしたら就職(企業や大学の研究室)の相談まで、国内外のバイオ関係者を結びつけることです。これによって、皆さんや皆さんの企業が新しい出会いを確保し、技術革新や個人的な幸せを実現することが目的です。
 今年は利用も登録も無料です。まずは下記より登録いただき、バイオジャパンのネットワークに参加願います。コミュニティが拡大すれば、それだけ皆さんのチャンスも膨らみます。面倒かもしれませんが、日本語だけでなく、是非とも英語でも記述願います。欧米やアジアから参加する世界の企業や研究者が、皆さんとの出会いを求めています。
 昨年までは忍耐力を試すようなシステムでしたが、さすがに3年間も改良を進めた結果、極めて快適に登録、そして利用できるシステムになりました。5-10分で登録でき、時間があるときに内容を編集し、充実させることができます。
 どうぞ今すぐに、下記よりご登録下さい。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/partnering.html
 マッチングシステムそのものの概要は下記の記事を参照願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2008070156623
 PS2
 もうすぐ締め切りです。どうぞバイオジャパン2008に奮って出展願います。
●出展企業募集
 1)バイオクラスター(ほぼ国内外の主要なクラスターが出揃います)
 2)バイオでライセンスや共同研究を求める製薬企業(国内外の20社程度が参加を表明しております)
 3)バイオベンチャー、医薬ベンチャー、環境関連ベンチャー(日本のバイオベンチャーは勢揃いします)
 4)個の医療関連企業・診断薬企業・バイオ関連機器試薬企業
 5)バイオ燃料、バイオプラスチック関連企業(国内外から
 6)ベンチャーキャピタル、投資家
 今年のバイオジャパン2008は、内容を刷新・充実させました。どうぞご期待願います。
 詳細は、
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/exhibitorsite/index.html をアクセス願います。  問い合わせメールアドレスはbio08@nikkeibp.co.jpです。
 今なら、何とか、出展場所を確保できることが可能です。どうぞ連絡をお急ぎ願います。