写真:ハリーポッターの完結編発売。品川駅中で立ち読みを試みるも、敵もさるもの。ビニ本であり、敗退。
 さて、本日はNPO法人個人遺伝情報取り扱い協議会の第7回の研究会に出席しています。この協議会は個の医療の分野でも極めて微妙である、善用できれば本質的に国民の健康に将来はインパクトを与えるDTC(Direct to Consumer)遺伝学的検査の事業化の自主基準作成や啓蒙を目的に設立された団体です。
 2008年4月には「個人遺伝情報を取り扱う企業が遵守すべき自主基準」を公表しました。医師を介さないで、遺伝情報を提供する事業の自主基準であり、当然のことながら、医療関係者や医学系学会から厳しい批判を受けました。
 消費者への情報提供のあり方はどうなのか、つまり医師が必要ではないのか?そんなサービスをしてよいのか?、体質遺伝子検査については科学的エビデンスがあるのか? といった批判です。
 半分以上は、今まで医療サービスを独占してきた医療関係者のパターナリズム、もう少し下品に言うと、既得権を護ろうというエゴだと思います。いつまでも、医者の指示による保健医療サービスに依存していては、国民の自主的な学びと行動変容による疾病予防などは実現不能です。第一今までの医学は病人ばかり見ており、未病状態の国民を対象にした研究蓄積は十分ではないことを認識して、医療関係者も患者も謙虚に協力し合わなくてはなりません。
 こうした批判を受けて、協議会も自主基準の改定に取り組んでおり、ことしは特に批判の強かった体質遺伝子検査に関して集中的に討議する予定であります。
 一番の問題は、質の高い遺伝子検査とは何か? そしてそれをどう確立するかです。
 現在、講演中の東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野の渡辺麻衣子特任研究員のお話からレポートいたします。
 米国疾病管理センター(CDC)が2003年にACCEモデルを提唱、遺伝学検査の質の評価の基準を提示しました。Analytic Validity(解析手法の評価)、Clinical Validity(臨床での証明)、Clinical Utility(臨床上の有用性)、Ethical,Legal and Social issue(倫理的法的社会学的な妥当性)の4つの観点から、遺伝学的検査の質を評価しようというものです。
 ACCEモデルはまったく妥当なのですが、CDC自身がそれを満たすためにはとても学際的な知識と労力、さらに莫大な費用がかかる。さらにはこうした労力を正当化することができるだけのデータが存在し、広範に応用された遺伝学的検査はごく少数だと、告白しております。つまり、これだけでは役に立たないという訳です。
 これを補うために、CDCはEGAPP(Evaluation of Genomic Applications in Practice and Prevention)プロジェクトを2004年から着手し、遺伝子検査の質確保の整備が始まっています。
 この背景には実は米国ではもうDTC遺伝学的検査の実用化が急速に進んでいるという実態があるのです。
 米Navigenics社(全ゲノム解析)、米23andMe社(疾患遺伝子検査、999ドル)、アイスランド・米deCode Genetics社(29疾患、性質に関する遺伝子検査、985ドル)、英NicoTest社(ニコチン代謝遺伝子検査、150ポンド)、英Genetic Health社(薬理遺伝学検査、180ポンド、栄養遺伝学的検査、293ポンド、肥満関連検査、295ポンド、女性疾患関連検査、825ポンド)など、多数の欧米企業がDTC遺伝子検査サービスを始めているのです。
 我が国でもちょっとウェブを検索すれば、肥満遺伝子検査を受託サービスする企業のリストが出てきます。これを自主規制し、質の高い遺伝学検査を提供するのも、今回の協議会の喫緊の課題です。
 米国連邦取引委員会、米国食品医薬品局、それにCDCは3者の共同声明を、2006年7月31日に発表、米国で販売されている家庭用遺伝子検査の中には、必ずしも科学的に認められていなかったり、結果の解釈が極めて難しい検査が販売されていると指摘。家庭用遺伝子検査薬(DTC遺伝子検査)の有効性に関しては、健全な懐疑主義を消費者が持つことを求めています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2003/8216/
 多分、業界の自主基準作成だけでなく、DTC遺伝子検査と現在の医学に対する健全な懐疑主義を育む努力をしなくてはならないと思います。一見、市場を縮小させる可能性があるため、検査業界は嫌でしょうが、本当はこれが一番大切だと思います。持続可能なDTC検査市場の育成の鍵を握るものです。
 資本主義の根本原理は、売る側と買う側の情報の均等性による健全な市場メカニズムであることは、たとえ医療行為であろうと忘れてはなりません。
 まして、DTC遺伝子検査おやであることは言うまでもないのです。
 今週も暑い。まったく黒焦げになりそうですが、どうぞ皆さん、お元気で。