土曜日の夕方に、BIO2008の開催地、San Diegoからやっと帰国しました。今回は米アリゾナ州も訪問、彼地の気温43℃とSan Digoの気温20℃、そして東京の気温25℃と、まあ世界はなんと多様なのでしょうか?
 まさか6月がアリゾナ州で最高に暑い時期とは知らず、強烈な砂漠初体験をいたしました。しかし、世界の均質化が進んでいる現在、3月のインド、6月のアリゾナ州で、まだまだエキゾチックな地域が残っていることを実感できたのは幸いでした。まだまだ地球は面白い。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3968/ 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3870/ 
 アリゾナ州Phoenix市は年間311日が晴天です。これを利用して、同州立大学の新しい学際的研究所バイオデザインでは、英British Petrolem社が共同で遺伝子操作で藍藻を改良し、バイオディーゼルを生産する技術を開発中でした。丁度、6月17日に訪問した時に、建物の屋上に、組み換え藍藻を大量生産するための閉鎖系培養装置の設置が終わったところで、これから3ヶ月かけて、パイロット生産し、事業化の可能性を評価します。もしここでゴーサインが出ればPhoenix市の西の谷にある火力発電所の脇に、大規模な組み換え藍藻培養施設を開設し、発電所から出る二酸化炭素を吹き込んで、本格的に経済性など事業可能性を研究するプロジェクトが進んでいました。上記の件に関しては近く、Biotechnology Japanでニュースを掲載いたします。
 今回のBIO2008では、1)個の医療、2)幹細胞治療、3)グリーンケミストリー、4)ホワイトバイオ(エネルギー生産)、5)サブプライム問題による、バイオベンチャーへの投資環境の悪化、などが主なテーマとなりました。
http://www.bio2008.org
 サブテーマとしては、米国におけるバイオシミラー(バイオジェネリック薬)の実用化を巡る立法動向、IT産業主導で進められている米国特許法の改正がバイオにどんな影響を与えるか? などでした。サブプライム問題によって、「あらゆるリスクから投資資金が逃げ出し、食糧やエネルギーに流れ込んだ」と米Ernst&Young社が指摘、「バイオベンチャー企業に関しては、この冷え込みの影響から逃れるために、コストの見直しが必要だ」と警告しました。今やバイオベンチャー企業もこの厳しい状況を生き残るため、フロリダの砂漠のサボテンのような覚悟が必要かもしれません。
 とは言うものの、結局、こうした難局を打ち破るのは最終的に技術革新しかありません。
 miRNAやsiRNAなどRNA工学を駆使したRNA創薬は極めて、堅実に臨床開発の成果が上がってきました。mRNAを標的とするアンチセンスDNAも含め、今年から2009年に掛けて新薬として販売許可申請が行われる見込みです。miRANも08年に相次いで臨床診断薬(FDAは未承認、ホームブリューイングの診断薬)として、実は米国で実用化が進んでいました。これに遺伝子治療が続く可能性があります。成人性幹細胞も実用化でその後を追っています。
 iPS細胞に関しては際だった議論はありませんでしたが、がん幹細胞でカリホルニア州がカナダ政府と提携、また、オンタリオ州政府が100万ドルをiPS細胞研究に新たに投資することを発表するなど、来年のAtlantaで開催されるBIO2009では火が着きそうな情況でした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3941/ 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3994/
 また、個の医療に関してはエピジェネティックスが新たに注目を浴び、診断薬の臨床試験も始まっていました。この件に関してもBiotechnology Japanで続報いたします。
 グリーンケミストリーはまだ、思考実験の段階ですが、エタノール→エチレン、プロパノール→プロピレンなど、現在の石油化学プラントの原料物質をバイオで生産し、そのまま石油コンビナートをカーボンニュートラルにしてしまおうという研究も始まっていました。
 中でも、英BP社と米エネルギー省はかなり真剣に研究開発を進めており、エネルギー作物のセルロースの化学構造を遺伝子操作でより糖化しやすい構造に変化するなど、様々な試みが行われていました。
 今や微生物レベルでは当たり前のように全ゲノムが解析され、総ての酵素遺伝子を発現し、酵素活性を評価、さらにメタボローム分析と組み合わせて、セルロースの糖化やエタノール発酵の最適な微生物をシミュレーションする研究が進んでいました。”微生物をリデザインする時代”がもうやってこようとしているのです。
 このスピードは何なのか?
 面として技術戦略を策定、遂行できる米国のダイナミズムとは何に起因するのか?
 毎回の如く、帰国する飛行機の中で苦吟、答えの無いまま今年もまた眠りこんでしまいました。
 頑張らなくては。皆さんも是非とも御奮闘願います。
 新しいことをやりましょう。
 さて、BTJジャーナル5月号はもうお読みでしょうか?
 今週は誰もが困っているトランスフェクションの最新動向と、世界で一番論文引用が多い研究者、大阪大学審良静男教授が世界トップレベル研究拠点プログラムで昨年10月に設立した大阪大学免疫学フロンティア研究センターの狙いを明かしています。全文無料でダウンロードできます。どうぞ下記からアクセス願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 今週もお元気で。
 
PS1 
 皆さん、もう登録なさいましたか? 1週間にして1000人突破いたしました。
 環境資源エネルギー、そして農業に関係するバイオリーダーがそれぞれのビジョンを皆さんに直接お届けいたします。合わせて、BTJで報道された関連ニュースの見出しも提供、重要情報の見落としを、これで防ぐことができます。最近のホワイトバイオの動きは極めて急です。石油文明一辺倒だった世界が変わろうとしています。ご関心のある方はどうぞ下記からご登録をお急ぎ願います。
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/green/index.html
PS2 
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