どうやら個の医療の定量化が進み始めました。
 
 現在、全米で7500人の医師が使用し、5万5000件以上の診断が行われている、個の医療の診断薬のパイオニア「OncoTypeDx」をご存知でしょうか? 開発した米Genomic Health社によれば米国の医療保険の80%以上が、保険料償還の対象としています。これが本当だとするならば、最も商業化が進んでいる遺伝子発現診断薬といえるでしょう。これを追っているのが、わが国のシスメックスが開発中の「C2P」。細胞周期を調節する遺伝子CDK1遺伝子とCDK2遺伝子の発現量と活性化量の比を目安に、幅広いがんのタキサン系の化学療法の応答性を診断するものです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/9903/ 
 OncoTypeDxは、日本でも今年、横浜市にあるベンチャー企業、DNAチップ研究所が導入、わが国でも商業化が始まりました。受託検査では一部先行して、発注を受けている臨床検査ラボもあります。
 実際には、患者さんの乳がん組織のパラフィン切片から21種の遺伝子発現を調べ、スコア化し、抗がん化学療法の適不適を、医師が判定することを支援するデータを提供しています。この「再発スコア」によって化学療法の選択を判断することによって、有効でない患者の副作用の被害を抑止することができます。また、より有効性の高い患者さんだけを選択して、高度化学療法を行うこともできます。患者さんにとって負担の大きい抗がん化学療法の適正使用を可能としました。米国臨床癌学会なども使用を勧奨しています。
 実際に臨床試験で有効性が証明されている患者は、1)新規に診断された患者、2)ステージ1もしくは2の比較的軽症の乳がん患者、3)リンパ節への転移が無い、4)女性ホルモン(エストロジェン)受容体ががん組織で発現している、という4つの条件を満たす必要があります。
 2008年6月2日に、同社は従来の21遺伝子の発現スコアに加えて、エストロジェン受容体と男性ホルモン(アンドロジェン)受容体の乳がん組織での発現量を定量化して測定したスコアの提供も始めると発表しました。これによって、乳がん患者のホルモン療法の適用などの選択がより確実になるという訳です。
 今までの再発スコアが定性的な遺伝子発現プロファイルのスコア化であったのに対して、同社はホルモン療法など治療薬の標的となる受容体の数を定量化して、薬効の効き目をより定量的に判断する診断薬の開発に踏み切ったのです。
 現状では無理ですが、将来、標的医薬が次々と誕生したならば、ガン細胞上の標的医薬の数を定量化して、予め治療効果を予測することも不可能ではなくなるでしょう。実際、同社は抗体医薬ハーセプチンの標的であるerbB遺伝子の発現の定量化診断薬の開発に着手したと宣言しています。
 定性から、定量へ。個の医療の診断薬もより精密化へと動き始めました。
 今週も皆さん、お元気で。
PS
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