写真:国民の医療に対する意識調査を発表する日本医療政策機構の小野崎氏。民間のシンクタンクが医療制度に提言するようになったことは評価に値するが。
 最近は眠れぬ夜を過ごすことが多いのではないでしょうか?
 昨夜、資料をまとめながら、つい全仏オープンのシャラポアvsサフィーナ〔マラトサフィンの妹)の対戦を午前3時まで見てしまいました。シャラポア不調でありましたが、フランスの新聞の見出しの如く、戦いはまさに決勝戦に価する好ゲームとなりました。体幹のしっかりしたサフィーナの重いショットに、美女で野獣のシャラポアも吹き飛ばされた感じです。ひょっとしたら優勝する可能性もあると思います。なお昨日のサッカーのオマーン戦に関しては、悲観的過ぎたと反省しております。各方面からお叱りもいただきました。
 さて、悲観だけに浸っていられないのが、日本の医療です。
 昨夜、イノベーション21と臨床研修医制度改革のエンジンでもあった黒川清氏が主宰する日本医療政策機構のメディアセミナーに出席しました。午後7時始まりとメディアの事情を熟知している設定もあり、会場は50人を超す記者や編集者で満杯となりました。「当初は15人程度の出席を見込んでいた」事務局も嬉しい悲鳴を上げておりました。
 それだけ、我が国の医療の綻びが露わとなり、メディアも報道するようになったということです。みのもんたの番組関係者も参加しておりました。次の衆議院選挙では、間違いなく後期高齢者医療制度や医療崩壊などが論争の焦点となることは間違いないでしょう。
 その意味で、民間のシンクタンクの活動は、国民が医療に対する選択肢を学ぶためにも重要です。日本医療政策機構は、確か昨年から国民の医療に対する意識調査を実施しており、昨夜も最新の調査が発表されました。昨年の調査でも明確に示されていましたが、国民の間で医療に対する受診抑制が起きている実態を今年も確認いたしました。低所得者層にその傾向が顕著で、具合が悪くなっても4割近い方が、医療機関を受診しなかった経験がありました。
 厚労省も医師会も口を開けば「いつどこでも、誰にでも医療が供給される我が国の国民皆保険制度は世界最高だ」と賛美しておりますが、それは幻想に過ぎず、勤務医の過剰労働による医療崩壊と3割負担など個人負担の増加によって、世界に冠たる国民皆保険制度の実態は緑色に腐敗していることを正確に認識しなくてはなりません。
 財務省の高齢化による医療費増によって国民負担率が増えるぞという脅しは、国民負担率の高いスウェーデンやフランスにおける医療費の個人負担が日本とほとんど変わらないこと、国民負担率の高い北欧諸国が経済的な競争力で世界をリードしている現状を認識すれば、茶番に過ぎないことが明白です。
 皆さんは、国民負担率の分子=国民の負担+民間企業の負担、であることを知るべきです。スウェーデンやフランスで国民の医療費負担が我が国と同じなのは、我が国の企業の3倍もこれらの国の企業が医療費を負担しているためです。
 日本医療政策機構のアンケートも、1)税負担なのか?保険料での負担なのか?をきちっと議論していない、2)国民負担率のからくりを理解していないデータの解釈がある、3)所得者層別の分析で、富裕層の設定が甘く、国民の7%にしか相当ていないまま分析している、4)混合診療の認知度も調べず、ちょっとした説明で回答者に選択を迫っている、5)技術革新と平等給付を対立概念とだけ捉え、財務省の罠にはまっている、などの欠陥があります。ある意味では為政者や政治家に利用される可能性がありますが、こうした副作用があることを飲み込みながら、それでも医療に関して、直接的な利害関係のある厚労省や医師会の誘導尋問的な国民の意識調査よりましであると考えます。
 是非とも、日本医療政策機構が成長し、厚労省や医師会のシンクタンクと拮抗する実力をつけていただきたいと願っております。
 まずは、我が国の医療に関する統計の整備と公開(厚労省は日本の疾患毎の患者数の実態も把握していません。二年に一度一日だけの患者調査からの推計は頼りになりません。また、レセプトのデータベースを公開して、実際にどんな医療が行われているかの実態の数字も明らかにすべきです)をこのシンクタンクは腐心すべきだと思います。
 加えて、臨床研修医制度導入後の医師の適正配置を誘導する新しいメカニズムの提案も喫緊の課題として取りまとめる必要があるでしょう。BTJ/HEADLINE/NEWSでも前に書きましたが、医療で儲けを追求して何が悪いという地獄の釜の蓋を開けてしまったからです。医局という封建的な仕組みが、経済原理だけでない医師の配置を支えていた現実を、政策担当者は予見できなかったのか?その代替システムを用意はしていなかったのか?
 医療は一日も途切れることができないサービスです。非連続的な変化は人の死や不幸に直結することを肝に銘じなくてはなりません。
 バイオもいよいよ新薬をぞくぞくと医療現場に提供し始め、医療費増加という矛盾を生みつつあります。技術革新と給付の平等をどう両立させるか?私にとって大きな取材のテーマとなっています。是非、皆さんとこれから考えて行きたいと思います。ご意見をお待ちいたします。
 現在、関が原を通過中です。これからバイオビジネスコンペJAPANの本選会に参加します。バイオテクノロジーの技術革新はこれから幾何級数的に増大します。社会制度的欠陥でそれを我が国の国民が享受できないのなら、これ程大きな悲喜劇はないと思います。皆さんも大いに発言してください。
              Biotechnology Japan Webmster 宮田 満