現在、大阪で開催されている第二回次世代医療システム産業化フォーラムに参加しています。08年3月、早稲田大学と共同で医学と工学の融合を狙う、TWIns(先端医科学研究センター)を開設した東京女子医大と早稲田の研究者達が、最先端の再生医療や医療機器に対する共同研究の提案を具体的に行っています。
 聴衆は120人以上集まり、久々に熱気が戻ってきた感じです。
 iPS細胞効果というべきでしょう。
 京都大学がiPS細胞の特許管理会社設立にやっと重い腰を上げました。6月には設立される計画ですが、関西系の金融資本3社からCSR(社会貢献)として合計12億円の出資を受け、尚且つ、京都大学が意思決定をするスキームを考えておりますが、本当にそれでうまく行くのか? 民間企業3社の本質は利益追求であり、CSRを名目にした出資は、そのための呼び水であることを認識しなくてはなりません。
 衣の下の鎧を見据えた上で、3社独占を許さず、ビジネスベースの枠組みを創るべきだと思います。そうでないと、3社の金の力に引きずりまわされることになります。たった12億円でひも付きになる愚だけは防ぐ必要があるでしょう。小さな資金で成果管理会社を作り、3社以外からも増資を募る工夫こそ、京都大学のフリーダム・オブ・オペレーションを確保する道だと思います。また、その方が資金も集まります。
 「京都大学はiPS細胞の価値を、目前の12億円」であると認識している訳ではないでしょう。出資する3社もそれを前提に、CSRと割り切り、お行儀良く支援すべきです。まさに、社品が問われているのです。
 だが、事業に素人のアカデミーがヘゲモニーを握ることが本当に世紀の技術革新であるiPS細胞の研究成果を、患者さんに最大限、更に最も迅速にお返しできるか? は疑問です。企業も大学もエゴを捨て、全体を見据えた賢人の議論を詰める必要があります。大学はまず、公的な、つまりお金にならない研究こそが、尊いという思い込みを排除しなくてはなりません。患者に製造物責任を負って、安全で有効な細胞を供給することは、企業でなくては不可能だからです。
 金融機関はともかく、事業会社の貪欲は製品を世に送り出すためである場合もあるためです。
 医療という公共物を、資本主義のエンジンを使ってどうやって加速的に実用化するか? 果たして京都学派がこの問題を賢く解くか? 6月に設立されるiPS細胞の資本構成と、取締役で確かめることができると、楽しみにしております。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3048/
 もう半年以上ももたもたしておりますが、世界のiPS細胞関連特許の囲い込み競争は猛烈な勢いで進んでいます。国内からも亡命者がでる始末で、もはや待ったなしの状況です。ライセンスの原則を決めた後、アカデミーの見識で選んだ企業人に、企業経営を託することこそ、京都大学の進む道ではないでしょうか? 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3047/
 京大の宝箱の中にはiPS細胞以外の技術革新も満載だと思います。iPS細胞に拘泥している時間も人材も京大にはないと私は思います。
 さて、iPSの技術突破で、再びバイオ技術の応用が膨らんできた医療機器です。
 1990年代から約10年以上、治療用の医療機器の臨床開発鎖国を実施してしまった厚労省、医療関係者、医療機器メーカーは、技術革新の並に乗り遅れ、更には世界市場の統合化の並にも乗り遅れ、今は企業規模、研究開発能力で世界と競争できる企業はテルモなど数えるほどになってしまいました。
 その結果、ペースメーカーでは市場の90%以上、カテーテルでは65%以上が、輸入品に依存する状態になり果てました。財務省の調査では、その結果、米国で7万1000円で購入できるステントは、わが国では25万7000円、米国で78万3000円で販売されているペースメーカが148万1000円で売られているという、内外価格差が生じています。
 医薬品は我が国では世界でも最も安く薬価が定められていますが、医療機器は市場を既に海外企業に独占さえれているため、厚労省も価格決定能力を失っているのです。この結果、医療機器ではなおさら我が国から普及すればするぼど、膨大な利益が吸い上げられる形になっています。研究開発に投入されるべき利益を得ることができない我が国の医療機器メーカーは、研究開発を進めることができず、ジリ貧に陥っています。このままでは消滅の危険性すらあるでしょう。
 内視鏡やCT、超音波検査装置など我が国の市場の7割以上を国産メーカーが支配しており、国際的にも競争力があるのとは好対照です。しかし、国策のためか? 我が国の医療機関には画像診断装置が異常に設置されている現状もあります。
 これも財務省のデータ(当然、医療費削減を狙った発表です)では、人口100万人当たりCTは92.6台(米国は32.2台、以下同じ)、核磁気共鳴装置(日本企業の市場占有率は30%程度)は35.3台(26.6台)と米国を圧している状況です。
 我が国の患者さんは先端画像診断機器で、病気は診断されるのですが、治療のための新薬や医療機器の開発は遅れているという惨めな状況、つまり不安だけ先端医療によって与えられているという誠に愚かしい目に合わされているのです。
 我が国の医療制度は歪んでいます。患者の救命と幸福のために、総ての制度を再編成する時期が来たのです。地方から大都市まで波及した医療崩壊によって、我が国の医療は最高だという国民がかかっていた幻想も失われつつあります。若干やけくそですが、これを好機に大改革を行うべきでしょう。GDP2%を医療や健康に追加投入する位の荒療治が必要です。厚労省や医療関係者の焼け太りと既存の医療体制の合理化を共に進めることで、消費税の値上げにも合意形成が可能だと思います。
 米国には4700万人無医療保険者が存在します。我が国にも一説には500万人存在し、後期高齢者医療制度導入や貧富の格差によって拡大する可能性があることを忘れてはいけません。世界に冠たる国民皆保険も実質は崩れ始めていることを直視せざるを得ないのです。
 私や皆さんの老後も本当はとても心配なのです。例え貯金を持っていても、医療が供給できない可能性もあるからです。
 最後に、皆さんに6月、アリゾナ州Phenixとカリホルニア州San Diegoにご一緒に行きましょうというお誘いです。そろそろ締め切りが迫ってまいりました。今回の旅はバイオが直面する事業化の現実をきわどく見てこようというものです。
 今年も、大阪商工会議所がBIOの視察団を派遣します。
 今回の目玉はアリゾナ州政府前面支援の下、FDAがアリゾナ大学と共同で創設したクリティカルパス研究所を訪問することです。臨床開発を加速するための、制度や技術的な研究の中心に直接訪問いたします。
 勿論、世界のバイオを知ることができるBIOにも参加いたします。6月15日から21日、米国にご一緒いたしましょう。 詳細は下記のリンクをご覧下さい。一読の価値はあります。
http://www.osaka.cci.or.jp/Seminar_Event/bio2008_mission/index.html
 毎朝、パワーブレックファーストで、本日の見所や昨日の成果の情報交換もいたします。これはきついが、役に立ちます。一人でも多くの方のご参加をお待ちいたします。
 今週もお元気で。