まずは、iPS細胞の「山中教授の第二の挑戦」という記事をBTJジャーナルに執筆しましたのでどうぞお読み下さい。新しいiPS細胞の研究拠点の内容と問題に言及しました。勿論、下記のサイトより無料でダウンロードできます。どうぞ、お急ぎ下さい。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 もう一つ、緊急のお知らせを。 関東経産局が、10月に横浜で開催されるわが国最大のバイオ展示会・シンポジウム「BioJapan2008」でアライアンスプロモーションを開催、バイオベンチャーに講演枠を無料で提供いたします。国内のバイオベンチャー企業なら誰でも応募可能です。締め切りは5月22日。こんな機会は滅多にありません。数多くのベンチャー企業の参加をお待ちいたします。2万人の前で自社を宣伝いたしましょう。詳細は下記よりアクセス願います。
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/bio/20080418alliancepromotion_BioJapan2008.html
 ゴールデンウィークの中日でどうも気分はリゾートに傾きがちです。 チャンピォンズリーグは予想通り?、マンチェスターユナイテッドが、バルセロナを1:0でホームで下し、決勝進出です。明日の朝3時からのリバプールvs チェルシーの試合の勝者と、モスクワで決勝戦を行います。しかし、どっちが勝ってもイングランド勢の戦いです。セリエAのスキャンダル以来、サッカーの中心はすっかり西に移動してしまったことを示しています。
http://jp.uefa.com/
 さて個の医療です。 2008年度の日本国際賞が個の医療の元祖ともいうべき、米John’s Hopkins大学医学部遺伝医学分門の教授Victor McKusick教授に贈られました。1960年代からヒトゲノム地図の作製に関与し、1988年には国際ヒトゲノム解析機構(HUGO)の初代会長にもなった研究者です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/2427/
 同氏が受賞のため来日した個の医療に対する見通しは、意外にもちょっと悲観的でありました。個の医療を現実化するためにも、同氏の懐疑に対して答えをきっちり用意することが重要だと考えます。
 「私は、Personalized Medicine という言葉よりIndividualized Medicineという言葉の方が適切だと思う。患者の個性をより強調した言い回しだからだ」とMcKusick氏は指摘しました。国際ハップマップ計画をはじめとする研究プロジェクトで、糖尿病、高血圧、心臓病やがんなど多因子疾患に関与する遺伝子が現在、盛んに解析されているが、「遺伝因子と疾患について有意性を示せた例はごくわずか」と懐疑的な姿勢を示した。「多分、自然とはそういうものなのだろう。あるいは、我々のアプローチが正しくないのかもしれない。ハプロタイプと疾患の関連解析は、実験を行うこともそのデータを解釈することももとても難しい」と指摘したのです。
 但し、McKusick教授が疾患に遺伝的な背景の影響が弱いとは考えてはいないのです。実際、同氏は1960年代に低身長症のアーミッシュの遺伝学研究を行い、CHH (Cartilage-hair hypoplasia )が遺伝性疾患であることを発見した当事者です。
 アーミッシュは強固な宗教的共同体を形成しており、小さな集団で婚姻することが多く、家系情報も保存されているため、疾患と遺伝情報の解析が容易であったのです。McKusick教授は疾患の遺伝的背景を追求するために家系情報を重視していました。現在の連鎖不平衡解析など集団遺伝学的なアプローチよりも、家系解析という伝統的な手法に信頼を明らかに置いています。勿論、この考えを古いと切り捨てることもで出来ますが、本当に個の医療の実現を急ぎ、不要な投薬や副作用を抑止することを目指すなら、集団遺伝学と家系分析の両方のアプローチが共に重要であると、認識した方が得策だと考えます。 「合理的に考えれば、各個人は3、4個は『悪い』遺伝子を持っていて、その組み合わせによって病気になったり、あるいは疾患抵抗性を獲得したりする。日本では、遺伝病などに対する偏見などにより、遺伝子による疾患の発症という合理的な対立する考え方があり、ヒトゲノムや遺伝子の研究が進まなかった」とMcKusick教授が指摘している点は、心にとめなくてはなりません。個の医療の実現のためには、わが国の社会に存在する遺伝子に対する偏見を改める努力を重ねなくてはならない。このためには、小学校から大学までの遺伝に対する教育内容を改善するという10年単位の努力が必要であるためです。
 今年86歳になった同氏は、決して伝統的な手法に固執するだけではありません。同氏が大いに期待しているのが、5万倍以上従来のDNA塩基配列コストを既に低下させてしまった次世代DNAシーケンサーです。「1000ドルゲノムプロジェクト」が達成されれば、「あなたはある病気の危険因子を持っているけど、抵抗因子もあるから発症はしない、といったアドバイスも可能になる。将来は『一族の中のあなた』ではなく『あなた個人』を調べられるようになる」とMcKusick氏は期待していました。家系分析による罹病感受性30%という曖昧な個の医療から、同氏の言うIndividual Medicineへの展開を握る鍵がここにあるのかも知れません。
 日本でも京都大学で患者を対象に、ホールゲノムシーケンスが始まろうとしています。現在、倫理委員会に申請中です。日本でも個の医療を実現化する大きな研究のうねりが始まりました。詳細はBTJ(
http://biotech.nikkeibp.co.jp/)で報道します。
 今週も皆さん、お元気で。
PS
 FDAが臨床試験の合理化のために、Critical Pathという概念を提唱していることをご存知でしょうか? 私も知っていることは知っているのですが、実感を得たわけではありません。FDAとアリゾナ州が創設したCritical Path Instituteを、BIO2008 の視察を兼ねて、訪問するミッションを大阪商工会議所が編成します。是非とも、クリティカルパスとは何か? 体験できるツアーとなりますので、ご参加願います。
http://www.c-path.org/
 私も参ります。詳細資料とお申し込みは下記のサイトで。
http://www.osaka.cci.or.jp/Seminar_Event/bio2008_mission/index.html