写真:山中教授の発表にカメラマンが殺到する。まるでアイドル。私も写真を撮っているので他人の事はいえないが、本当に異常。もうそろそろ報道はアイドル的ではなく、静かにすべきだと思います。
 現在、小降りの京都を発ち、土砂降りの東京に向っています。
 車窓から見える田植えを待つ田んぼが水浸しです。まるで東南アジアの田んぼのようです。
 さて昨日(2008年4月17日)は午後2時から京都大学の芝蘭会館で開催された第1回iPS細胞研究産業応用懇話会を取材しました。会場は大学関係者30人とメディア50人、そして製薬企業やバイオ研究支援企業192人以上が参加、熱気にあるれました。我が国の企業もiPS細胞の産業化に重い腰を上げたようです。昨年12月25日のJSTのシンポでは極めて企業は冷淡でしたから、この3ヶ月で急転したことになります。
 文科省、厚労省、経産省がiPS細胞を国家プログラムとして重視する姿勢を打ち出した、心理的効果かも知れません。
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 会場は、毎日新聞が報道した「バイエル薬品(旧日本シェーリング)がヒトiPS細胞を先に開発、特許でも先行」というニュースとそれを無批判に追従したメディアに冷笑を浴びせておりました。「京都大学が出願しているiPS細胞の特許は生物種を限定していない基盤特許だ」(京都大学松本副学長)と断言、単なる追試に近いバイエル薬品の特許は脅威でないというのが会場のコンセンサスになっていました。マウスiPS細胞の学術発表があった後に、同じ遺伝子をほとんど同じ手法でヒトiPSを作製しても、特許では容易に推定できる発明に過ぎません。ヒトiPS細胞作製に必要な培養期間の延長などを仮に特許で押さえたとしてもプロセス特許に過ぎず、容易に特許抜け可能でしょう。
 今回の報道には、旧日本シェーリングで研究開発を指揮していた桜田さんの影がちらつきます。何故、こんなミスリードをさせたのか?米国でヒトiPS細胞の企業化に邁進、京大山中教授が「日米の架け橋になって欲しい」と期待していたのに、一体どうしたのか?ちょっと心配です。

写真:高台寺の名園の鳥。長閑に首を伸ばしてじっとしていると思ったら、この後ざんぶと池に飛び込み、見事、魚を飲み込んだ。iPS細胞研究に対するわが国の企業とそっくり、でもあんまり様子だけ見ていると、勿論、魚にはありつけない。
 我が国でも産業化がやっと走り出したiPS細胞ですが、第1回iPS細胞研究産業応用懇話会を聞いて、大学と企業に相変わらずすれ違いが存在することが気になりました。大学は企業がプロジェクトを持って来いという態度ですし、企業は大学が具体的なプロジェクトで声をかけてくれるのを待望、あるいは政府がコンソーシアムなどを編成することを望み、にらみ合っている状況でした。
 これでは事が進まない。やはりこうした3すくみの状態を打破する事業化のプロデューサーが必要です。京都大学にその人材が居ないというなら、大学ベンチャー企業を創設、iPS細胞研究の事業化に必要な人材を確保すべきでしょう。最も技術の内容とその波及効果を理解し、尚且つ中立性を維持できる大学ベンチャーがどうしても必要です。現在のところ、我が国のNPOで世界と交渉可能な人材を集めることができるとは思えません。
 実は懇話会で発表された極めて重要な記事を書く時間がありません。来週、BTJで続報いたしますのでどうぞよろしく願います。
 土砂降りかも知れませんが、今週もどうぞよい週末を。(宮田満)