写真:2008年度日経BP技術賞大賞を受賞した京都大学山中伸弥研究室の皆さん。おめでとうございます。若者達の笑顔も素晴らしい。
動画:ウェブTVでも報道しました。3分で概要が理解できます。
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 皆さん、ご覧になりましたか?
 ハードディスクVTRの助けを借り、現在、ヨーロッパで開催中のUEFAチャンピョンズリーグの準決勝をようやく見ました。ケーブルTVに変えてから、フジテレビが放映する深夜の放送に頼らざるを得ず、まったく睡眠不足です。実は昼間の疲労でもろくもベットに沈没してしまったのですが、文明の利器のおかげです。
http://jp.uefa.com/
 今回のハイライトは間違いなく、マンチェスターユナイテッドVSローマの試合で、ローマのエース、トッティの欠場も響き、2対0でマンチェスターユナイテッドが勝利しました。この勢いなら、欧州クラブの最高峰となる可能性濃厚です。
 中でも、現在最も油が乗り、ドリブル、フェイント、シュートが切れまくっているポルトガル代表のクリスチャンロナウドのヘディングシュートは、今でも頭の中でリプレイされています。この一点で勝負は決まったと思います。勿論、英国人らしくゴール前での混戦で、最後に泥臭く蹴りこみ、敵の命脈を断ったルーニーも素晴らしい。この二人がエンジンとなって、きっと今回のカップはかつての工業都市、マンチェスターに凱旋するでしょう。
 TV画面の制約を今回のロナウドのシュートほど感じさせたものはありませんでした。実際、中継のアナウンサーも「どこから出てきたのか!!」と絶叫したほど。平凡なクロスに、画面の左端から飛びながら現れたロナウドが、懸命に阻止しようというローマのディフェンスを空中でなぎ倒し、そのままゴール。基本どおり、キーパーの足元にヘディングで叩きつけました。ロナウドはそのままピッチに倒れ込み、スタジアムは絶叫と歓声に包まれました。あのスピードで、正確にクロスボールの軌道を読み、跳躍、頭部でジャストヒットする身体能力は天才ならではです。 きっと空中のボールの軌道を分解写真のように捉える認知能力に富んでいるのでしょうね。彼の小脳と視覚野を見てみたい、と思うのはマニアックすぎるかも知れません。
 さてバイオです。バイオでもロナウドのヘディングに相当するブロックバスターが姿を見せつつあります。
 第一三共が米Amgen社から昨年導入した抗RANKL抗体、denosumabがそのブロックバスター候補です。 既に、欧米ではフェーズIIIに入っており、本日、BTJで骨粗しょう症の患者さんの骨量が増加したという臨床試験結果の一部を報道いたしました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1862/
 閉経後の女性ホルモンの低下によって、骨吸収が促進され、骨粗しょう症が起こります。この疾患は老齢化する我が国にとって深刻な病気で、骨粗しょう症の結果、大腿骨頭の壊死や骨折が女性の老人に引き起こされ、そのまま寝たきりとなる不幸な経過をたどることが多いためです。
 骨粗しょう症の医薬品には、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、女性ホルモン受容体の作動薬、骨のコーティング剤などが開発されていますが、骨粗しょう症の疼痛除去や進行を抑止することは可能ですが、一度、減少した骨量を増加させ、骨自体を丈夫にする根本治療にはかなか届かないというのが現状でした。
 今後の臨床試験で、安全性と骨量増加の再確認が出来れば、円熟期を迎える地球上の女性のほぼ全員の福音となる可能性があると思います。つまり、達者なお婆さんを抗体医薬がたくさん誕生させることになるのです。介護などによる負担も減少させ、お婆さんの幸福も増進させるという訳です。
 勿論、医薬品ですから、副作用がないと言い切れるはずはなく、今後の慎重な臨床開発が必要ですし、市販後もきっちりと調査をしていただき、長期に有効性が保証されるのか?副作用などは本当にないのか? を、検証しなくてはなりません。
 現在において唯一この薬に存在する副作用は医療経済への影響です。この医薬品は年2回注射するだけで効果が持続する画期的なバイオ医薬ですが、Amgen社は1回300万円以上の価格をつける予定であるといった噂も飛んでいます。現在の抗体医薬の1年薬価は1000万円から数百万円であり、また、denosumabの有効性や患者に与える恩恵を考慮しても、高薬価をつけたい希望は分かるのですが、我が国の保険医療制度がこの負担に耐えるためには、今から長期収載薬価の尚一層の引き下げや、国民医療費そのものを一時的に増加するなどの施策を打っておかなくてはなりません。
 現在の抗体医薬が治療を可能としたのはがん、中でも固形がん、リウマチなどの炎症、RSウイルスなどの感染症です。この領域の抗体医薬の実用化競争が起こっているのが現状です。denosumabは、骨のリモデリングを直接、破骨細胞と骨芽細胞のコミュニケーションに作用することによって、骨吸収に傾いていた骨粗しょう症患者を、骨形成に転ずる、つまり骨代謝のスウィッチを押す新しいメカニズムです。
 今後、抗体医薬の開発の標的に、こうした代謝や細胞分化の恒常性のスウィッチを握る分子が大きくクローズアップされて来るに違いありません。Denosumabの標的、RANKLのクローン化には日本の研究者の貢献も極めて大きかったことも忘れないでいただきたい。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/5554/
 先週の金曜日に日経BP技術賞の授賞式を開催しました。 今回の大賞はヒトiPS細胞を開発した京都大学医学部山中伸弥研究室でした。心からお祝いを申し上げます。研究室で授賞したいという山中教授の志も反映できたと思います。この業績もクリスチャンロナウド級であることは申すまでもありません。とりわけ若い諸君が良くやりました。表彰式にもおいでいただき、ありがとうございました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/1852/
 今週もお元気で。
 ps
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