写真:あらゆる細胞は揺らぎつつ分化の関所を越えていく(出典、Science2004年2月13日号)
 上村愛子、5連勝でワールドカップ年間種目別王者決定。
 おめでとうを百回申し上げても、この偉業を称えることはできません。やっと探し当てたCTVで、彼女の滑りを見ました。今回のコースは非情に堅く、私だったらものの10秒も持たず、エッジが滑ってコースアウト間違いなし。それなのにあれだけ早く的確なターンを織り交ぜ、しかも途中でヘリコプター(ジャンプの名称)やスキーをクロスしながら宙返りまで完璧にこなしてしまう。長野オリンピックの時はアイドルだった上村選手がここまで逞しく成長したことに感無量です。得点が伸びない、怪我でシーズンを棒に振る、およそあらゆる困難を乗り越えた勝利です。わざとらしい「イェーイ」という勝利の雄叫びにも、恥じらいとTVやファンへの気配りを感じて好感度を増しているのは、単にファン心理だけとは言い切れないものがあります。
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 さて、バイオです。
 先々週と先週、神戸、熊本、そして名古屋の日本再生医療学会で取材を行いました。その最大の疑問は、そもそも細胞はかなり可塑性が高いのではないか?という問いでした。
 神戸の理研の丹羽先生と熊本の粂教授の取材を通じて、ES細胞やそれから分化した細胞群そのものにも揺らぎが存在し、少なくとも2種以上の性質の異なる細胞が混在した群が培養条件などによって、A型が増える、B型が増えるように、振り子のように、揺らいでいるのが実態であることが実感されるようになりました。
 だからセルソーターによる細胞の分離によって、決して0、100によっぽどの場合でないと細胞は分けることができないのですね。今までは有望なバイオマーカーを同定できれば、ディジタルに細胞を分けることができると信じておりましたが、細胞分化は行きつ戻りつのアナログな変化であり、1細胞の現象と群としての現象が一直線には繋がらないというイメージを持つに至りました。
 分化はその揺らぎが大きくなり、新しい細胞群の混在が誕生する条件とも規定できるかも知れません。A型が消え、B型とC型の細胞群間で揺らいでいる状態です。こうした分化のポイントを乗り越える力を与えるのが、成長因子や分化因子といえるのかも知れません。言葉を換えれば、細胞分化の揺らぎを一方方向に導き、新たな細胞種群の間の揺らぎを定着させる力を持つのが、成長因子や分化因子、そして最近注目されているのが接着因子です。
 細胞分化の揺らぎがあるステージで定まると、DNAのメチル化などによって、DNA上の情報が書き換えられ、より細胞分化の状態が安定化する可能性もあります。実際にはエピジェネティックスの変化が先なのかもしれませんが、私の思いこみでは、まず細胞が次ぎの分化段階に進むことが必要で、その後に細胞分裂が起こると思っておりますので、多分、エピジェネティックスが後に来る。細胞分化の揺らぎ幅が狭まりある分化段階に収束する段階で、どんどのDNAに現在の分化情況の情報がエピジェネティックスによって、書き込まれているのではないかなと思っております。
 細胞の可塑性は、iPS細胞や再生医療の実用化の鍵を握っています。
 特に総合機構の皆さんは良く勉強していただきたい。こういた曖昧なもわもあした細胞群の品質管理を、化学物質と同じに考えると、大変な誤謬を招き、ひいては患者さんの利益を損なうことになる、と確信しました。
 今週は明日、北海道に移動、水曜日からなんとインドに向かいます。中国によるチベットの暴動鎮圧が波及しないことを祈っております。
 21日はモハメッドの誕生日です。今度はイスラム教徒で独立運動が高まっている新疆ウイグル自治区で暴発すると、インドにもイスラム教徒が多いので、情勢は流動化しそうです。
 旅の無事を皆さんも祈って下さい。
 PS1
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