写真:様々な人生を乗せて走る夜汽車。ほとんどの方はノックアウトされていますが、私の隣組だけは元気。
 バイオファインナンスギルド(今回のテーマは抗がん剤開発のビジネスモデル)の大盛り上がりを終え、夜汽車で名古屋に向っています。隣は関西の女性2人組み。何がおかしいのか、東京駅から小田原まで笑い転げ放しです。ころころと笑うエネルギーのおかげで、当方まで元気になるから不思議です。
 5年前にバイオファイナンスギルドを始めた時には想像もできませんでしたが、今回お呼びしたベンチャー企業はフェーズ1と09年にフェーズ1入りを予定するパイプラインを持つCanBasとジーンケアでした。それぞれ、細胞周期のG2チェックポイントとG1チェックポイントの特異的な阻害剤を開発中です。今や細胞増殖(EGF受容体キナーゼ、HGF受容体キナーゼなど)とアポトーシス(デス受容体など)に関係するシグナル伝達系に関与するりん酸化酵素阻害剤、いわゆる標的医薬の開発がたけなわです。既に臨床開発中の抗がん剤の7割から8割が標的医薬に変わりつつあります。
 本日の講師の一人である国立がんセンター東病院の大津先生などの努力によって、胃がんや大腸がんの分野で日本がリーダーシップをとって、国際共同治験も始まりました。これで抗がん剤などで著しく起こっていた日本と海外での新薬の許認可の遅れは急速に解消しつつあります。CanBasなど日本のバイオベンチャー企業が、欧米で新薬の臨床開発を行わざるを得ないというハンデは10年以内に解消される見通しが出てきました。
 CanBasは昨年、武田薬品に同社の第一号医薬、CB501をライセンスアウトしました。G2期のチェックポイントの阻害剤では、世界で臨床試験をリードする化合物ですから、当然、海外のビッグファーマにも導出できたはずです。何故、武田薬品と提携したか、その最大の理由は米国市場での共同開発を武田が認めた一点でありました。CanBasの科学諮問委員会には米国の抗がん剤開発の臨床試験の指導的な医師がずらりと顔を並べています。小さな縁からであった大物医師達が、G2チェックポイントの阻害剤という創造的なコンセプトに惚れ込んだ結果です。諮問委員は誰もが、20年間の抗がん剤の臨床開発の経験をすべて投入するという熱のいれようです。
 年2回行われる科学諮問委員会での議論は極めて具体的で、CB5001を抗がん剤として仕上げるためのステップを確実に前進させます。その諮問委員達が主張したのが、この化合物のことを知っている君たちが、臨床開発に関与する必要がある、という点でした。ただライセンスアウトしてしまっては、山あり谷ありの臨床開発で他人事では失敗する確率が高いというのです。G2チェックポイントの阻害剤が抗がん剤になるという検証途上の仮説に、確信を持つCanBasの関与が、ライセンスの絶対条件だったのです。幸いどうやら武田薬品はこの条件を認めたようで、米国の臨床開発にはCanBasも参画します。彼らの選択は、利益の拡大のためでなく、彼らが信じた革新的な抗がん剤、CB501を患者さんに届けたいの一念故にでありました。
 これこそがベンチャーの王道ではないでしょうか? CanBasの社長の河邊さんはベンチャーのよさとして「仮説に過ぎないかも知れない価値を追求できる」ことを上げました。だから革新的な創薬に挑戦できたのです。
 最後に小話を。エンジェルに明日、会社設立登記するから社名を考えておいてくれ、といわれて考え付いたのが、CanBas。本当はキャンサーバスターズ(ゴーストバスターズの影響です)と白地に絵を描くキャンバスの合成でCanBusが正しかったのですが。後で気付いたらしい。今は、antiCancer drug Based by scienceと言い訳しています。正しいスペルではGoogleで検索すると埋もれてしまいます。反って、CanBasの方がユニークで良いと私は思います。
 明日は、再生医療学会のランチョンでバイオファイナンスギルド in Nagoya、そして午後3時半からアジアの再生医療というセッションの司会を務めます。共同司会の名古屋大学の上田教授(今回の学会長)は、大臣が訪問するので途中で中座するから宜しくというメールを送って来るし、本当にどうなっちゃううんでしょうか?
 今晩も眠れぬ夜となりそうです。
   Biotechnology Japan Webmster 宮田 満
ps
  3月13日午後4時に、厚労科学研究費の利益相反指針が決まりました。07年度内に厚労科学振興課長通知として告示されます。是非とも厚労省のホームページでご確認願います(多分資料掲示は来週以降)。備えあれば憂いなしです。本当に利害相反管理体制の整備が急がれるのです。
  現在、厚労省の新薬認可の審査会に参加する委員の利害相反指針もワーキンググループの議論が終了、3月24日に報告されるメドが立ったところです。新薬審査で利害相反を管理する基盤がやっとできそうです。これで国民の信頼回復の一助になると期待しています。