化学物質のヒトと環境に対する安全性を確保する化審法の改正を目指した議論が始まりました。化学物質の安全性を監督する法律は、我が国が昭和48年に世界に先駆けて制定したものです。背景にはPCB汚染によるカネミ油症事件という悲劇がありましたから、決して褒められたものではありませんが、その当時の国民の怒りに、政府が真摯に反省し、世界に先駆けて立法したことは一定の評価を与えなくてはなりません。
 地球環境問題がここまでグローバルな共通認識となった今だからこそ、新しい観点でヒトや環境に対する安全性評価を見直す時期であることは間違いありません。欧州では域内に流通する化学物質の安全性データを最新の手法で再評価するREACH というプロジェクトが、08年4月から発動されます。きちっとした安全性データがない化学物質はEUでは生産も持つ込むことも困難になります。
 我が国の企業も、新規の化学物質の安全性データを確認することに加えて、昭和48年以前に生産しており、化審法によって安全性データの確認を免除されてきた化学物質の安全性のデータを改めて解析する努力を重ねてきました。
 安全と安心が価値を生む現在では、こうした企業の努力はかならずビジネスのリスク低減と消費者の支持による収益によって報われます。その意味では、厳しくしろという市民と経費負担を嫌う企業の間で官僚が調整するという、今までの行政市場とは異なるウィンウィンモデルを構築できるかも、知れないと期待しております。
 今後の課題はいくつもあります。私もこの分野は必ずしも詳しくないので、一から勉強させていただきます。皆さんからの情報提供やご支援を強く期待しております。
 これから1年かけて、化審法の改正を議論いたしますが、大きな論点は現在のところ4つに絞られています。第一はREACHではすでに対象となっている製造・輸入からサプライチェーン全体を通じた化学物質管理の重要性が増大していることです。特に、リサイクリングが重視される現在では、製造量で安全性を区別することは必ずしも市民や環境の安全性の担保にはなりません。
 第二はリスク評価の必要性と効率的実施方法。解析技術や生命科学の進展に応じた安全性評価が課題です。第三はハザード評価のあり方です。これは第二とも重なる課題です。技術的なアップデートと概念の拡張も議論しなくてはならないのではないでしょうか? 第四は既存化学物質の管理です。2002年9月のヨハネスブルグ・サミットで、2020年までに化学物質の製造と使用によるヒトの健康と環境への影響を最小化にするという合意の実現が迫られます。我が国では05年6月から官民連携による化学物質安全性点検(Japanチャレンジプログラム)というなんだか、ヨットレースのような事業が始まっており、残り80種程度の化学物質の評価が残っております。
 さらに、国際的な化学物質の安全性確保のシステムと我が国の化審法とのすり合わせと、安全性情報の国民との共有も大きな課題として残されています。
 我が国の化審法では、純粋な化学物質の安全性評価を問われますが、欧州では工場出荷段階の化学物質の安全性評価であります。微妙ですがこの大きな違い一つをとっても、国際的なハーモナイゼーションは容易ではありません。今年一年、私自身も必死に勉強しなくてはならない、と覚悟しております。
 さて本日は今年一番の冷え込みです。皆さん、どうぞご自愛願います。