世界陸上は土佐選手の頑張りで、何とか一瞬盛り上がりましたが、日本選手総崩れ、中でも男子100m×4のリレーは日本新記録でもメダルに届かなかったことを見せつけられると、日本陸上の国際的な地位低下が心に強く刻みつけられた読者も多かったのではないでしょうか?
 あれだけTVが盛り上げた今、虚脱感しか残りません。
 中でも、旧ソ連邦やジャマイカ、ケニアなど新興勢力が陸上界を席巻しつつある情況は、このままでは今後も日本の陸上競技は女子マラソンを除き、負け続ける情況になるのではないかと、嫌な予感すらします。
 陸連や体育振興の主体である文部科学省は何をやっているのか?
 文部科学省が所管する大相撲協会の体たらくも合わせ、今のスポーツ振興の仕組みが機能していないということです。
 スポーツほど結果が鮮明に出ませんが、文部科学省の振興策の機能不全は科学でも起こっているのではないか?
 問題の根はいくつもありますが、最大の問題は、両極端のコマーシャリズムと国の資金供給という、白か、黒か? という2種類の資金提供の道しかない、多様性の喪失にあると考えています。
 本来の科学は、慈善団体、財団、患者団体、個人の寄付、地方自治体といった多様な資金源が、研究を支えることによって、多様な科学やその当時の通年では余りに革新的な科学の芽でも育むことが可能なのです。
 実際、ヒトゲノム計画の先駆的な研究には国税は投入されていません。
 英国はウェルカム財団、フランスはジーンドゥセット財団、イタリアでは24時間テレビキャンペーン、そして我が国では笹川財団(現日本財団)が資金供給をしています。
 儲かるかどうかというコマーシャリズムと、官僚的保身と財務省の教養のなさのために、米国にちょっと遅れて追従するテーマしか、資金を投入できない、今の我が国の研究振興の仕組みにも、技術革新が必要だと痛感しています。
 そうでなければ、近々、大変なことが起こる可能性があります。
 現在、文部科学省が進めている研究費のデータベースによって、厚労省、経産省などの省庁縦断的に研究費の重複を避ける仕組みの開発が行われています。これが完成すれば、省庁を超えて同一テーマでの研究費を取ることが難しくなります。今まで、省庁の壁によって支えられてきた国の研究費の多様性が失われるということです。
 同様なデータベースを、科学研究費を支出している我が国では数少ない慈善団体や財団をも対象にしようという意欲を持つ官庁もあり、こうなると同一テーマや類似したテーマで複数の資金源を我が国で得ることは我が国では相当困難になります。
 こうした傾向の背景には、確かに同じ研究なのに、多数のグラントを獲得していた研究者がいたことは事実です。また、同一省庁や各省庁で、類似したテーマを若干言葉を変えて、研究費を獲得してきたこともあります。つまり、各省庁間の分担も不明確で、重複した無駄な研究費が投入されてきたという総合科学技術会議の指摘にも理由無きとはいいません。また、企業との関係で財団を通じた研究費提供が疑惑を生んでいる情況にあり、利益相反の名の下に、規制しようという空気も形成されていることも事実です。
 しかし、こうした情況を丸ごと総て悪であると決めつけて、重複している研究費をばさばさと削ることが是認されるのは、文部科学省なり厚労省なり、1省庁が単独で十分研究を遂行するために必要な潤沢な研究費を提供していることが前提です。我が国の現状ではこんな姿は望むべきもありませんし、もし仮にあったとしても、一省庁が政策目標を遂行するための研究としては良いでしょうが、イノベーションや発見を行う研究のために、過度な重点化や一省庁依存を深めることは、気まぐれなセレンディピティをものにして、新しい発見を進めることは非効率であり、新たなボス支配を生み、我が国の科学研究の停滞を招くことは必然だと思います。
 一方で産学連携やトランスレーショナル研究を進めていながら、企業が同じテーマで資金供給したら、重複と見なすような単純な決めつけや、利益相反を総て悪であると決めつける、単純化は科学発展の妨げ以外何物でもないでしょう。
 利益相反は単なる状態であって、それぞれ成り立ちやミッションの違う組織が、共同研究する場合、つまり産学連携では避け得ないことを認識していただきたい。これが世間の疑惑を受けるようになるか、あるいは産学連携の成功例として社会の賞賛を得るようになるかは、皆さんが所属している大学や研究機関が、きちっと利益相反をマネージメントし、「これこれこういう情況だから共同研究を認めました」と社会に説明できるかにかかっています。正しい研究者を護り、社会の支援を得る体制を我が国の大学や研究機関は整備しなくてはなりません。その際に最も重要なことは、研究の自由をどう確保するか、そしてそれを可能とするコモンセンスを組織の構成員全体が共有できるか、です。
 つまり、現在の大学教官はその研究が商業化に近かろうが、遠かろうが、無関係に、利益相反と大学と社会との対話について勉強し、適切に行動する必要があるということです。
 現在、厚労科学審議会で利益相反のガイドライン作製を進めています。
 是非とも皆さん、下記のリンクから議論にアクセス、ご意見をいただきたいと思います。皆さんの理解がないと、利益相反というお題目の下に、産学連携が萎縮しかねない危険も孕んでいます。これは皆さんの創造的な研究に必要な研究費の多様性を減少させることに繋がります。是非とも、この問題に関して、皆さんも発言願います。
http://www.wam.go.jp/wamappl/bb11GS20.nsf/vcl/List?open
 さて、最後にお願いです。
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 今週も、お元気で。
 PS0
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