日曜日、朝起きて見たら、皆が杉山選手は頑張ったのに惜しかったと言っており、狐に騙された気分になりました。というのも前の晩に、延々とウィンブルドンのセンターコートにそぼ降る雨の映像を見続けており、今日は絶対に試合はないと確信して寝たからです。しかし、NHKは工夫がない、ウィンブルドンに雨はつきものです。雨が降ったときに延々と芝生のコートを守るために張られたテントやカバーの揚げ下げの状況を深夜に1時間も放映するとは。かつての名勝負のVTRぐらい再放映しても良かったのではないか。
 ぼーっと陰鬱なロンドンの郊外の風景を見させられていたら、瞼も落ちるのは止むを得ません。しかし、残念でした。良く戦ったのですが、シャラポアの壁は高かった、ようです。
http://www.wimbledon.org/en_GB/index.html
 見落としたものを見たくなるのは人情の常です。皆さんにも後悔だけはさせたくありません。
 7月12日の抗体医薬のセミナーはおかげさまで、本日午後5時に満員札止めになりました。当日は指定席ではありませんので、少しお早めにお越し願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/070712/
 7月4日開催の「siRNA創薬、成功の鍵」もおかげさまで、7月3日お昼に申し込みを終了いたします。今回、スポンサーのご厚意によって、頭の固い研究者ではなく、助教までの若手研究者と大学生を無料招待いたします。どうぞ下記から一人でも多くの若手研究者のご参加を期待します。お早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/070704/
 さて、宣伝の最後は、7月26日の「miRNAが変える、創薬、がん、発生研究」の募集を開始いたしました。今回のセミナーでは、高感度次世代DNAアレイのデータも発表されます。このアレイを使えば今まで解析できなかった、レアな遺伝子発現を測定可能です。miRNAは格好のターゲットです。多分、今年の広範には生物学を大きく変える道具として認識されるでしょう。
 詳細は下記より、どうぞお早めにお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/070726/
 さて、現在、文部科学省が5年間200億円以上投入して、30万人のDNAサンプルと症例を収集している「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」(2007年度終了)の後継プロジェクトを検討する委員会に参加しています。5月末までに17万6257人(応諾率85.6%)、25万8184症例に関して、きっちりインフォームドコンセントをいただき、DNAと血清、匿名化した臨床情報の提供を受けました。患者さんにはそれぞれの医療機関で、フォローアップが行われており、臨床情報と血清の収集が継続されています。今年9月で収集は一旦締め切られます。30万人のDNAと血清を収集することは困難でしたが、30万症例の収集はクリアできそうで、関係者一堂ほっと胸を撫で下ろしている状況です。
 こうした遺伝情報と疾患のケースコントロール研究では、よほど強い環境圧力を与えないとなかなか明確な遺伝子型による差を研究することは難しい。今回は収集する症例数と、ゲノムワイドにSNPs(1塩基多型)を解析することで乗り越えようとしております。実際、共同研究によって、続々と疾患関連遺伝子が発見されつつあります。今回のプロジェクトはとにかく30万症例を集めることが最大の目的でしたが、テイラーメイド医療を実現するには、まだ5合目に上ったに過ぎません。真の意味で、SNPs解析データに基づき、疾患になりやすさや病態を予測するには、まだまだ研究が必要です。
 後継プロジェクトでは、残りの5合目を上るためにも、現在蓄積したDNAサンプルや血清を幅広い研究機関や企業にどうやって活用してもらうか、が課題となります。個人情報を保護しつつ、より精度の高い臨床臨床情報とのリンクをどう進めるかも重要な課題となります。更に言えば、今回のプロジェクトでは、インフォームドコンセントの書式を定め、患者さんと医師の間に入って患者さんに説明し、納得してDNAや臨床情報を提供していただく調整を行うコーディネータも3000人近く養成しました。更には、個人情報の匿名化法やセキュリティを守る手順、高速でジェノタイプの価格破壊を起こした新技術の開発、凸版印刷と島津製作所との共同研究による80分で血液1滴からSNPsを測定する装置の開発、プロジェクトは独立し、病院などの査察も行ったELSI委員会など、今後の個の医療の基盤技術やプロトコルを開発しましたが、これを我が国や国際的に大勢の研究者や医師に活用してもらい、デファクト標準を目指すことも必要になると思います。
 私が是非とも読者の皆さんに活用することをお願いいしたいのは、2万5000症例以上ある抗がん剤の症例です。抗がん剤は医療における最も大きな環境圧力とも言えます。収集した症例の過半数以上にグレード3以上の副作用が報告されています。まずは、薬剤の副作用を予測できるSNPsマーカーの実用化を目指すべきだと思います。抗がん剤を商品化している製薬企業の出番だと思います。今回の委員会でどんな抗がん剤の副作用症例が集まっているのか、公表されていましたので、近くBTJのHOT NEWSで記事として紹介いたします。是非とも、抗がん剤を現在発売している製薬企業の関係者は注目していただきたいと思います。
 米国では2005年6月から大腸がん治療薬、「イリノテカン」の初回投与量を解毒酵素UGT1A1の遺伝子型*28をホモにもつ患者では低減すべきだと添付文書が改定されました。この結果、もう成熟した商品であった「イリノテカン」の売り上げが、米国で再び上昇に転じました。
 誰でも、副作用のリスクを予防できれば、効く抗がん剤を選択するのです。今の商品の寿命を延ばし、臨床経験に富み、安全性と有効な使用方法の知識が蓄積している抗がん剤を適切に使うためにも、「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」のサンプルと臨床情報をご活用願いたいと思います。
 そろそろ日本全体で今進んでいるケースコントロール研究やコホート研究(患者群を前向きに長期継続調査し、より思い出しバイアスの少なく、SNPsと疾患関連遺伝子の関係を探索したり、ケースコントロール研究で発見した疾患関連候補遺伝子を確認したりするために重要)を、統合的に集約し、国民の健康に還元する大きな枠組みを議論する必要がある、これは後継プロジェクトの委員会全員の意見でもあり、苛立ちでもありました。
 富士山も山開きですが、個の医療の実現には尚、急峻な山道が続くことを覚悟しなくてはなりません。また、それだけの苦労をする価値もあると考えます。
 皆さん、お元気で。
 PS
 若手研究者のアイデアを共に発展させる塩野義製薬のシーズアイデアコンテスト、FINDSは先週の金曜日に締め切りました。おかげさまで、240件以上のご応募をいただきました。どうもありがとうございました。
 FINDSの資料は下記から。
http://www.shionogi.co.jp/finds/