まずはお知らせです。
 7月4日のBTJプロフェッショナルセミナー、「siRNA創薬の成功の鍵」の申し込みサイトがオープンしました。今回はSilence Pharmaceuticals社のCEOもわざわざ来日、年内に臨床試験を予定している全身投与siRNA製剤の最新情報も発表する予定です。抗体医薬の次の新薬プラットフォームとなるsiRNAの最前線と臨床開発の全貌を知ることが可能です。席数に限りがあります。どうぞ、下記からお申し込みをお急ぎ下さい。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/4539/
 昨夜はあわやフランスオープンテニスで、シャラポアが負けそうになりました。
 しかし、土壇場での精神力の強さは並ではありません。獰猛になった彼女の反撃の結果、パティシュナイダーは最後の最後でひっくり返されました。美女で野獣というTV番組がありましたが、シャラポアはまさにそれ、世界で最もギャラを稼ぐプロスポーツ選手である理由が良く分かりました。
 さて、バイオです。
 現在、東京プリンスホテルで開催中の第七回ライフサイエンスサミットの会場におります。
 会場は約400人の関係者で満員であります。自民党のライフサイエンス議員連盟が民間のバイオ産業人会議と主催する一種の政治的なショウが始まりでしたが、さすがに7回目になると、ここで議論されてきた問題点と解決方策が稔りの時期を迎えつつあります。政治を巻き込んで、生命科学の発展と産業化を図る努力もけっして無駄ではなかったと実感しています。面倒ですが、白い巨塔に立てこもっても、世の中は変わりません。科学者たちももっと社会に向けて発言を行うべきだと思います。今は、インターネットという便利なコミュニケーション手段を皆さんは手にしていることを忘れてはなりません。
 何故、最近臨床研究に対して、政府が180度態度を変えたのか?
 実は前回のライフサイエンスサミットが機転となり、議連での決議、総合科学技術会議の意見具申、バイオ産業人会議の発議が昨年12月に相次いで発表され、安倍内閣の目玉として治験改革が動き出しました。
 目に見える効果として、臨床研究と臨床研究への橋渡し研究の予算は、2006年の186億円から、2007年には30%増の243億円になりました。2008年はさらに増額されるだろうと考えます。
 さらにライフサイエンス推進議員連盟幹事長、細田博之衆議院議員によれば、医薬品医療機器総合機構の定員を197人から、3年間で433人に増員することが決まりました。これでも米国食品医薬品局J(FDA)にはかなり見劣りしますが、今まで増員よりも減員を義務付けられていた独立行政法人で増員を実現したことは、医薬品企業にとって、また政府関係者にとっては、空前絶後の驚きとして認識されています。
 勿論、例外的な増員の背景には、製薬業界が人員増の経費負担を飲んだことがあります。しかし、これは既にFDAが、製薬企業からの審査料金の増額して、制度改革を行った前例を踏襲しただけです。何故、こんなことをもっと早くできなかったのか?今や、世界で実用化されているトップ100の新薬の内、28新薬が発売されていない新薬後進国に成り下がるまで放置した、産学官政の責任は大きいと思います。
 今回の倍増で問題は解決しないのではないでしょうか? 更なる人員の拡充は不可欠です。今回のサミットでも、1000人まで増員することも検討すべきだという指摘もありました。
 更に、増員枠は確保したものの、どんな人材を採り、どんな審査体制を敷くか、まだ制度設計ができていないことも認識しなくてはなりません。薬学の教科書しか読んだことのない審査官が、医療現場を知らず、新薬開発に無理難題を押し付けて、かえって開発を遅らせる可能性があります。
 そのためには医師や製薬企業の人材の登用が不可欠ですが、そのためには大幅な待遇改善も必要です。更には日米欧の3極で同じような審査を繰り返すのはコストの無駄であり、いつまでの制約企業の脛をかじることも経済合理性がありません。次の制度整備は、世界の新薬審査機構との共同運営体制を構築することです。それを前提に、我が国の総合機構も1000人体制を制度設計すべきだと思います。
 「日本版FDAを創らなくてはならない」(井村裕夫科学技術振興機構研究開発センター首席フェロー)。この決意を実現するため、粘り強く働きかけなくてはなりません。
 「治療研究と献血手帳、 治験後に新薬が出たときにインセンティブを与えられないか?、被害者救済のための新たな法的枠組みの整備も重要だ。2008年度の予算要求締め切りが8月末、これを目指して新しい制度、税制を実現すべきだろう。治験に関しては患者保護などの立法を検討したい」と細田氏は締めくくりました。
 我が国の臨床治験改革には、制度、法律、人材育成、文化などの多数な要因が絡まっております。リスクの高い臨床研究に国民が安心して参加できる基盤を創るためには、明日にもそれが実現できると考えるのは楽観的に過ぎますが、歯車がやっと回り始めたということも、希望を持って頑張るべきだと思います。
 一番の問題は悪しき平等主義を捨て、臨床研究がきちっと可能な医療機関だけを選別し、支援することです。一方で標準医療の普及を進めながら、先端的な医療研究・新薬研究を行う病院を医療クラスターの中心にすえる必要があるでしょう。勿論、このためには診療報酬点数の格差も必要となります。
 つまり、既得権に凝り固まっている日本の医師に格差を認めさせ、なんでもかんでも大病院に殺到する患者の行動を変える必要があるのです。高齢化社会を迎え、もはや待ったなし、私たち自信のものの考え方の転換も迫られています。
 今週もお元気で。