昨日、Bostonから帰国しました。
 ちょうど時差が13時間というのは、こちらが寝ようとすると、東京で仕事が始まり、起きようとすると東京は夜となります。メールを読み出すと連続的に仕事をするはめに陥ります。インド人の気持ちが良く分かる感じです。
 BIO2007の取材のタフさと時差のおかげでへろへろになっているというのが現状です。回復には1週間はかかりそうです。勿論、機内映画「ドリームガールズ」のせいでもあります。ダイアナロスとモータウンサウンドには大変お世話になっており、今回の映画のディナジョーンズとレイボウレコードには思い当たることばかり、思わず昔を思い出しました。ジェニファーハドソンがアカデミー賞で最優秀助演女優賞になるのは当たり前ですが、ディナジョーンズを演じたビヨンセノウルズも只者ではありません。
 物語の急展開のきっかけとなる「One Night Only」を唄う場面では、ダイアナロスにそっくりで、鳥肌が立ったような妖艶さまで再現しています。彼女が現れなかったら、この映画は出来なかったと深く感じました。40代以上の読者には特にお勧めいたします。
 さてバイオです。
 今回のBIO2007はホワイトバイオを中心に取材をいたしました。
 以下に、BIO2007の記事の特集をまとめましたので、どうぞご覧下さい。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/NEWS/sp_show.jsp?spid=81
 ホワイトバイオに関して一言で言えば、米国政府の極めて強いイニシアチブによって、セルロースエタノールの産業化が猛烈に進んでいます。まだ、記事を書いておりませんが、減税から補助金までありとあらゆる手段を米国政府は駆使しております。例えば、07年から08年にかけて、米国内に6カ所のセルロースエタノール工場が稼動しますが、その背景には1ヶ所に60億円から80億円相当の補助金が米エネルギー省から投入されています。
 日本の場合では政府の資金だけで先端技術の実用化が進むのですが、米国ではこうした米国政府の姿勢を敏感に感じ取ったベンチャーキャピタルが一斉に、ホワイトバイオテクノロジーに2006年に集中投資(Ernst & Young社)、次世代の成長の種となるベンチャー企業が創立されました。自由なアイデアの開発が一斉に始まったのです。
 勿論、農業や資源エネルギーはベンチャー企業が垂直統合した企業に成長する可能性は低いと思います。いずれ、成長したホワイトバイオ企業を、石油や穀物メジャーが買収によって傘下に収めていくだろうと思います。
 米国はこうした研究開発が巧みです。
 初期の研究開発は政府資金で世界的にも独創的な研究が行われている日本ですが、基礎研究から商品化までを結ぶ、橋渡し資金が少なく、それを行うベンチャー企業の創出のためのベンチャーキャピタルも乏しいため、途中で水子になってしまう、日本の基礎研究が多いのが残念です。日本でも、ベンチャーキャピタルに投資した場合に減税を認めるなど、政策投資銀行などを経由して政府が直接投資するだけでなく、民間の知恵と力をベンチャーキャピタルへと誘導する措置が必要です。
 BIO2007の取材に毎年うかがっていますが、よくマンネリにならないと自分でも呆れています。しかし、国内取材だけでは残念ながら世界のバイオ研究やバイオ投資のトレンドにどうしても遅れてしまいます。国内で遅れたバイオの時計の時刻を世界標準時にあわせる必要があります。
 今年の国内のバイオ時計と世界標準時の遅れは、昨年より拡大しました。
 ホワイトバイオでは前述のように決定的に、遅れました。我が国にもブームや言い訳で無いエネルギー戦略の策定が必要です。
 一方、個の医療も国民皆保険が足かせとなって、FDAが認可する前にどんどん医療保険で遺伝子検査が事業化されている米国のダイナミックな実用化に、我が国はどんどん取り残されていきます。米国の医療保険会社Athea社の発表によれば「200件以上の遺伝子検査が実用化している」とのこと。同社によれば、遺伝子検査の同社の保険による支払いは06年度に前年比17%増加していました。医師による適正な治療選択に貢献することと、それによるコストベネフィットが証明されればどんどん医療保険でカバーすると断言していました。
 この背景には医療保険が厳しい同業他社との競争に曝されている現状があります。厚生労働省のように、競争なしに、独占的な認可権を握る仕組みでは、技術革新を積極的に取り入れるインセンティブうは沸いてこないと思います。やはり、日米欧の厚生労働省、FDA、欧州医薬庁が国際的に協調と競争を行って世界同時審査を行う体制を整備するしか、我が国の停滞を打破することはできないのでしょうか?
 海外取材するたびに、また我が国が置いてきぼりをくったと悄然とした思いにとらわれます。これはバイオだけでなく、メディアでも、そして他の産業でも同様なのではないでしょうか?
 一部の救いは、11月にジャスダック証券市場で3社バイオベンチャーが上場しそうであることと、我が国のバイオベンチャーの一部が海外企業との提携が実現しつつあることです。海外で十分競争力のある少数ですが、元気の良いバイオベンチャーを支援しようという国内のエネルギーはまだ健在です。後は成功するしかないのではないでしょうか。Just do it。運動用品メーカーのような気持ちです。
 最後にBIO2007をまとめた記事を再掲いたします。
 2007年5月6日から5月9日まで、米国Boston市で開催された世界最大のバイオ会議・展示会BIO2007が幕を閉じた。次回は2008年6月17日から19日に、米San Diego市で開催される。ジーンタウンからバイオビーチへBIO2008は移動することになる。
 最終的には、世界39カ国から2万2366人(前年比15%増)の参加者を集め、文字通り世界最大規模を維持した。しかも、バイオテクノロジーの世界的な普及と研究活動のグローバル化により、BIO2007の参加者の30%は米国以外の参加者が占めるまでになった。
 「バイオテクノロジーは米国の独占ではない。欧州にも、アジアにもバイオテクノロジーの研究があり、私たちは国政的な競争を続けなくてはならない」と米Massachusetts工科大学のPhillip A. Sharp教授は最終日のセッションで指摘した。
 生物や生命を対象とする以上、バイオテクノロジーは工学などと異なり、世界各地の気候、地理、文化、規制などの多様性の影響を受けざるを得ない。冷戦終結後のグローバリゼーションは、インド、中国、両国だけで米国の理科系大学生の学生数の3倍を擁する事実を浮かび上がらせた。
 今回のBIO2007でもアジアを中心に、南アフリカ、ハンガリー、チェコなどの中欧のバイオ参入が注目を浴びた。
 我が国の企業、ベンチャー、そして大学など公的研究機関も、いつまでも国内市場のぬるま湯に使っている場合ではない。JETROがまとめた日本ブースでも、欧米追従型のアイデアのベンチャー企業には訪問客も少なかった。その代わり、糖鎖など我が国が世界をリードする部門のベンチャー企業に対する関心と引き合いは多かった。
 もはや、国内研究(つまり我が国初)と国際的な研究を区別することは意味を失い。私たちはいやおうも無く、グローバルな研究開発競争の渦中に、日本に居ながらに巻き込まれてしまったことを強く認識するべきである。世界は、少なくともバイオ研究・産業化ではもう一つになってしまった。(宮田満@Boston)
 やややけくそですが、日本の元気なバイオをもっと取材して、皆さんに支援してもらうように、私たちも努力しなくてはなりません。
 その一環で、シオノギ製薬のシーズコンペ「FINDS」をBTJは支援、iResearchで応援しています。5月14日からいよいよ募集が始まりました。皆さん、是非どしどしご応募願います。皆さんのアイデアが孵化する可能性があります。下記をご参照願います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/3338/
 皆さん、今週もどうぞお元気で。