「130円もするのか」
 今朝、余りにも嬉しくてスポーツ新聞を買ってしまった感想です。ちょっと浦島太郎になっておりました。
 が、日刊スポーツに掲載された、中村俊輔の写真は価値があります。文章を超えた迫力がありました。これで130円は本当に安い。
 一度はやって見たかったと試合後に、中村俊輔がはにかみながらコメントした、ゲームシャツを脱ぎ、ぶんぶん振り回し、敵地のゴール裏で応援するサポーターの群にに飛び込む、その姿を余すことなくこの写真は伝えています。カメラマンはまるでこうなると予測したようなポジションにいました。これがまた凄い。
 トルシェ監督に嫉妬されフランス・ワールドカップに参加できなかった悔しさ、そしてジーコ監督の下でのドイツ・ワールドカップでの惨敗、移籍したセリエAでは控えとして悶々とする不遇にも耐えなくてはなりませんでした。
 2年前にセルティックへ移籍し、一挙にいままでの屈折を晴らした中村俊輔の06/ 07年シーズンは運も引き寄せました。まさか、ロスタイム残り68秒でフリーキックをゴールのサイドネットに突き刺し、スコットランドプレミアリーグ連覇と同リーグMVPを決めるとは、彼の精進に神が祝福を与えたとしか思えません。実際、余りに鋭く早く曲がる素晴らしいフリーキックなので、敵のディフェンスのみならず、2人のセルティックスの選手ですらヘディングを空振り、結局、中村俊輔の得点となる見事さです。勿論、敵のキーパーは一歩も動けません。
 元々、把握しがたい顔をしていますが、スポーツ新聞が掲載した歓喜の一瞬の表情に、今までの怨念を超克した男の自信もじみでていましたな。28歳、大したものです。来期は是非とも、イングランドのプレミアリーグやセリエA、リーガエスパニョーラなど、本当のトップで勝負をしていただきたい。
 今、ライフサイエンスの領域の研究者は環境悪化に直面していますが、それはわが国内の事。今や大学にしがみついていても、定員はどんどん削減される時代です。そろそろバイオでも、研究者は海外市場に打って出て、自分の時価を上げる時が来たのではないでしょうか?
 一種の反動でしょうが、経済財政諮問会議などの大学に対する競争原理に偏った議論を聞いていると、この国は本当に知的創造が分かっているのか? また、明治時代と同じく、文明開化だけの責任を大学に負わせ、工学部を総合大学に導入するという奇妙なことをやってしまうのではないかと懸念しています。
 大学における競争原理とは何か?
 それは企業における競争原理と同じなのか? それとも違うのか?
 大学から本質的な議論を仕掛ける時は来たと考えます。企業も大学が企業に似ることを望んでいません。どう似せても役に立たないB級の企業が誕生するだけです。真の国際競争力を目指すなら、企業の真似などする暇はないはずです。
 さて、それでは科学研究論文の善し悪しをどう計測するかが、もし大学評価の肝であるとするならば、「それが可能だ」とインパクトファクターに群がっている大学の先生や官僚に冷や水をかけてやりたいと考えています。
 今月、インパクトファクターを策定するThomson社のセミナーが、東京で開催されました。どうやったら論文の評価を上げることができるのか? あるいは主催する学会誌の評価を上げることができるのか? かなり思い詰めたわが国の大学関係者が押し寄せ、会場は満員でした。
 元はと言えば、サイテーションインデックス(論文の引用インデックス)を創るために、どの学会誌を調査すれば良いか、社内の資料作成のために、考え出されたインパクトファクターですが、今や地獄の閻魔の鏡ように、論文の価値(これは本当は誤解)を定めるまでにあがめ奉られています。現在、7622雑誌、新規に毎年2000誌を検討して、10%は採用する努力には敬意を払うべきです。調査対象の雑誌に掲載されている論文が過去2年間の掲載論文をどう引用しているか、ひたすらカウントして、1年間の総論文数で割って算定するというシンプルさが良いところです。
 しかし、皆さん、一つ注意しなくてはなりません。
 Thomson社も再三強調していましたが、インパクトファクターは雑誌の重要度を評価する目安にはなりますが、その雑誌に掲載された論文の重要度の目安としては、まったく役に立たない、というのです。
 つまり、例えNatureやScienceに載って論文でも、5回以上引用されるのは全論文の25%以下であり、殆どの論文は1回も発行されてから2年間に引用されない、極端な偏りがあることを忘れてはなりません。
 インパクトファクターの高い雑誌に載ったからといって、その論文が今後2年間で他の科学者の注目を浴びたり、科学研究を進めることに自動的に貢献することはありません。
 では、まったく無意味なのか?
 競争力を経済利益という浅薄なものだけに限れば、わが国が米国に次いで世界第二位の巨額な科学研究費は無駄ばかりということになります。経済財政諮問会議はこのレベルの議論に止まっています。
 私は30年前に、クラミドモナスという単藻類の培地にむちゃくちゃに塩化カリウムを加えた時、半死半生状態の小さな単藻が自分の細胞の周囲を多糖類のカプセルで覆い、高浸透圧(つまり準乾燥状態)に耐えるのを発見、これは論文になると思い指導教官に駆け込んだところ、「過去の文献を調べろ」と叱咤され、医学図書館に1週間籠もって調べたことがあります。そしてとうとう1800年代の半ばのドイツの研究者が見事に同じ論文を書いていたことを発見、がっかりすると同時に知恵の継承がいかに重要か、身をもって知った経験があります。
 今後2年間の引用回数など、私たちの知の形成の尺度としては余りに近視眼的であると思います。しかし、今までの学者仲間の仲間内評価(ピアレビュー)だけでは、もはや大学お研究者は説明責任を果たせないことも事実です。
 科学の社会貢献とは「こういうものなのだ」と、どうどうと論陣を展開し、今や風前の灯火、気息奄々となっている、しかも若い頭脳は理科系を敬遠するまでに零落した、大学の存在価値を大学人が主張する時なのです。
 いつまでも政府の方針に媚びへつらって、知的な創造の社会基盤である大学を次々と落城させてはなりません。今や運営費交付金の減額によって毎年、岡山大学規模の大学が1つずつ消えている現状を、皆さんは直視するべきです。
 そのためにも世界を見るべきです。
 5月6日からBostonで始まる、世界最大のバイオイベントBIO2007にご一緒に参りましょう。
 Whitehead Institute for Biomedical Research (MIT)
 The CBR Institute for Biomedical Research,
 Harvard Medical School
 Genzyme社などの訪問ツアーも充実しております。
 参加の形態は自由、現地集合も可能です。現在、BOSTON地区のホテルは満杯です。宿泊にお困りの方も是非、ご参加願います。毎朝、現地ではパワーブレックファーストを開催、BIO2007のトピックスを議論します。現在、調整中ですが、松坂にも会えるかもしれません。どうぞ下記をご参照の上、お申し込み願います。
http://www.osaka.cci.or.jp/Seminar_Event/bio2007_mission/index.html
 最後のお願いは、4月27日のDNAチップセミナーへの参加のお誘いです。26日まで募集をいたしますが、もう残席があまり無くなってまいりました。一足違いで満席の場合はご容赦願います。
 4月27日午後1時から個の医療の鍵を握る遺伝子発現プロファイリングの論文の6割に欠陥があり、正しくマイクロアレイを使うためのガイダンスを論文発表した米国国立がん研究所のSimonセンター長を国際回線でつなぎ、緊急討論するセミナーを開催いたします。
 がん研究にDNAチップやマイクロアレイはこう使うべきだというコンセンサスを皆さんと創りたいと思っております。パネルを盛り上げたいので、論客の参加は大歓迎です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/1459/
 皆さん、今週もお元気で。