安藤美姫、よかったですね。首都圏の視聴率は何と38%を記録したほどです。読者の中にも、浅田選手と中野選手の健闘も合わせて、昨夜はただ涙涙の方もいらっしゃったのではないでしょうか?
 あれだけトリノオリンピックで辛酸を舐めた彼女の復活は見事です。体重は変わらないとコメントしていましたが、身心の充実がこれだけ選手を変えるのか、皆さんも実感したはずです。一時は荒んでいた感じもあったのですが、昨夜の彼女は透明感に溢れていました。本当の美は、精神の写す鏡なのですね。苦労が彼女の精神を磨いた。その光は皆さんの心にも充実感を与えてくれたはずです。しかし、荒川静香の元コーチであった、安藤選手のコーチの手腕は注目に値します。バイオでも、起業家や研究者をコーチング人材の養成を検討しなくてはなりません。
 安藤選手がこれで4回転ジャンプをコンスタントにこなすことが出来れば、浅田真央やキム・ヨナの3人のアジア選手が当面は、フィギュアスケートの世界に君臨することになります。欧米の足下にも10年前にはとても及ばない競技であったのに、本当に隔世の感があります。バイオでも、若い才能を体系的に訓練して行けば、きっと10年を待たずして、世界に互することができるようになる、と勝手に独り合点しておりました。殆ど決定的だと思われていたプロポーションの問題ですら、10年で世界を凌駕できることは心に刻まなくてはなりません。バイオでも、今の沈滞を破る道はきっとあるはずです。
 さて、先週の金曜日から日曜日の朝まで、伊豆のホテルに各分野から選抜された60人ほどが缶詰になって、日本の医療の現状を議論する「医療セクター評議会」の取材をして来ました。大学病院、民間病院、医療経済学者、健康保険組合、看護師、地域医療代表、患者団体、厚労省前次官、コンサルタント、広告代理店、社会学者、日本医師会、製薬企業など、医療に関係する幅広い関係者の論客が集められました。敢えて言えば、民間生命保険と薬剤師の代表を欠いていたと思いますが。
 参加者の一致した感想は、今までこれだけ広範な立場の医療関係者が同じテーブルで議論する機会は無かった、そして、これが困ったことですが、現在のわが国の医療制度は破綻の危機に瀕しているとのことでした。しかも、医療制度の破綻を、どうやって、どこから解決すれば良いのか、アイデアもそしてコンセンサスも無い状況でありました。今回、医師や看護師から現場の生の声を聞くことができましたが、聞けば聞くほど暗くなります。
 破綻は、勤務医不足とそれによる過酷な勤務実態(若手医師が過酷な病院勤務を避け開業に走っている)、医師の大都市への集中と地域医療の崩壊(医師の絶対数は充足)、看護師の絶対数不足(離職率の高さ)、開業医の窓際化(医学の進歩に追いついていない開業医)と病院の開業医に対する不信(病診療連携が出来ない原因)、患者の大病院信仰(開業医への不信)、患者の医療への無理解と医師の被害者意識、終末期医療のコンセンサス不足による医療資源への圧迫(微妙な表現です)、健康保険組合や地方自治体など保険者の能力不足(医療資源の適正配分に貢献不能)、厚労省による病院の病床削減・在宅看護シフトの政策転換へ体制が付いていっていない、医師とコメディカルの業務分担(医師がすべてを抱え込んで、多忙という現状)、女性の医師やコメディカルが生涯就業できる支援体制不足、技術革新導入を阻む制度的な壁による医療の国際競争力の低下、民間病院の赤字経営、医療財源難(但し、今回の会議出席者の間ではGDP比1-2%はなお医療費を増やせるという意見は多かった)、などの形で私たちの身近に迫っております。何もせず時間の経過に任せておいては、事態は悪化するばかりだと思います。
 しかも、国民皆保険でありながら、わが国では病気の患者数や疾患毎の医療費、医療行為の内容に関する調査データも殆どの疾患で手に入れることが困難です。医療に関するデータが極めて不足しているのです。支払い基金はすべての医療行為に基づく医療費の請求書(レセプト)を審査しているのですが、そのデータの電子化が遅れているため、情報を活かすことができません。わが国の医療政策の議論は極めて定性的なデータに基づいて、立案され、効果が判定されているのです。つまり曖昧模糊とした政策決定と評価が行われているのです。個人情報の壁はありますが、医療情報は公的な知識として、公開すべきだと考えます。
 いつものことですが、会場にはジャーナリストは私一人で、勿論、全員から集中砲火を浴びました。確かに、マスメディアの報道には、副作用のような悪い情報が過大に報道される不均衡という問題があります。最近の例では、タミフルの副作用は連日報道しますが、世界の80%近くもタミフルをわが国で消費しているという世界の医療とはかけ離れたインフルエンザ治療が行われていることは、ほとんど報道していません。但し、ひたすら欠陥を謝っているだけでなく、医師もそれなら情報発信すべきだということで、相打ちにまでなんとか持って行きました。医療を取り巻く関係者の中に存在する情報ギャップを少しでも小さくする努力は重要だという認識では一致しました。
 元厚労省の担当者の「卒業後医療研修の義務づけで、これだけ勤務医不足が生じるとは誰も予想していなかった」という正直な声を漏らしたほど、実は制御不能の事態が生じています。診療報酬や病院の基準、病床規制など、医療の中身にはほとんど触れられずに、厚生労働省は医療制度の舵取りをせざるを得ないジレンマがあります。そのため、厚労省の施策はほとんどの場合、局所最適を目指す施策をパッチワークのように展開せざるを得ず、結局、医療資源(医療費だけでなく、人材、病院・診療所の能力、地域の支援体制など)の全体的最適配分が出来ないという構造的欠陥も見えてきました。
 その意味では、医療関係者が一堂に会して本音で話した今回の会議はとても意味があったと思います。但し、これを主催したRoy Pfauch氏が共和党の有力なロビーストであること、そしてスポンサーが、外資系企業3社であったことは記録すべきだと思います。わが国の製薬企業や業界団体などが、もっとこうした議論の場を設定することに熱心でなければなりません。
 今週も皆さん、お元気で。