現在、2年ぶりにフランスのLyonに滞在中です。欧州も暖冬で、既に春です。日中は汗ばむ位です。但し、夜は寒くなるのが大陸です。日本では花粉症のため、マスクをしている若者が目に付きましたが、当地ではまったく零。戦後、杉を大量に植林したという事情以外に何か、花粉症の原因があるのでは、と疑ってしまいます。花粉症の最新研究動向は、BTJジャーナルの最新号に掲載しておりますので、下記よりどうぞダウンロード(無料)願います。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 本日から、1999年からバイオのダボス会議を目指し創設されたBioVision2007が始まります。今年はコンゴからブルキナ・ファソまで、幅広い発展途上国の参加が目立ちます。アジアは中国が存在感を示しています。今年も5月に開催される世界最大のバイオコンベンション、BIO2007と比べ、旧植民地に対する配慮や社会的なバイオの受容を真剣に議論する点が、際立った特徴です。片や、商売ばかりが眼につくBIOとは対象的です。
http://www.biovision.org/ https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/2592/
 前回、BioVision2005までは、しかしながら具体性を欠く哲学的議論が展開されやや退屈であり、やはり欧州は時間がかかると呆れるシーンが多かったものです。
 しかし、今回はがらりと変わりました。ます、昨年から欧州各国でプレカンファレンスを開催、BioVisionで討議すべきテーマをまず煮詰めるなど、議論の裾野を広げました。しかも、BioVision2007では、具体的に国連が提唱した21世紀に解決すべき課題(MDG、Millennium Development Goals)を明確にした点も評価できます。
http://www.biovision.org/events_uk.htm
 さらに提言を実現するために基金(The World Life Science Foundation)を創設、最も資金を必要とする初期開発や初期の研究費に投入します。まさにBio Vision2007は、「議論だけから行動するフォーラムに変貌しつつある」といえるでしょう。あるいはそうなりたいと努力し始めたというのがより正確な表現かもしれません。
http://www.biovision.org/WLS_foundation_uk.htm
 11日はノーベル賞学者のフォーラムが開催されました。失礼ですが、正直を申せば、もはや盛りの過ぎた議論が多く、オミックスの一言も出て参りませんでしたが、「公的な資金で支援された基礎研究の理想的なゴールは、治療薬や診断薬の開発にある」とLyon出身のRoger Guillemin教授の指摘は説得力がありました。
 本当に良い基礎研究は必ず新しい産業応用や新しい物の見方を提供することによって世の中を良くするものだと確信しました。ノーベル賞学者にも賞味期限があると、驕った見方は訂正しなくてはなりません。欧州には、教会との血みどろの戦いの結果、社会に根付いた科学の伝統があります。我が国のように、”科学原理主義”が跋扈するのは、まだ科学が舶来の借り物で、社会に融合していない証拠かも知れません。役に立たないことを良しとする下らぬ権威主義は、自信の無さと長期的展望の無さに過ぎなかったことがよく分かりました。
 BioVisionは日ごろの取材で零れ落ちた大切なものを気づかせてくれる貴重な機会です。深く、そして大きく物事を考えるとはこういうものなのだと思います。ユーロが強烈に強くなり、Frankfurtで買ったら1ユーロ、172円でした。凋落する円とユーロの差が、物事を深く、大きく考えず、企業、政府・政策決定者、市民、そしてメディアも、単に米国の物真似でなんとかなってきた差であるような気がしてきました。ユーロで支払うたびに、この精神の堕落の結果が招いた痛みを甘受しなくてはなりません。しかし、タクシー代がこんなに高いのはまいります。
 皆さんは、どうぞ今週もお元気で。