現在、あずさ9号に乗って、松本に向かっております。
 東京はまだ雪が降っておりません。雪を楽しみにきょろきょろ見回しておりますが車窓から見える山々は黒々としており、まるで春の山です。先ほど通過した峠でわずかに森の日陰に残り雪を見るのみです。やはり八ヶ岳が見えるまでは無理なのかも知れません。中央線は景色が変化に富み、なおかつ、FOMA(新型カードです)の電波も強いので、まるで編集部にいるように仕事が出来る利点、あるいは欠点があります。
 週末は久しぶりに東京に滞在しました。春の陽気に誘われ、遊びすぎてくたくたです。松本浅間温泉に早くたどり着きたい。テニスを久々に2日連続してやったため、筋肉痛です。しかも、全豪オープンテニスも楽しみ、負けたシャラポアの「私は負けるのは嫌いだ」とのコメントを彼女らしいと感心したり、まったく相手を寄せ付けなかったフェデラー(1セットも落とさずに優勝したのは27年ぶり)を賞賛した表彰式の司会者の「You are special.」という当意即妙の表現に、確かに彼はまったく他の選手に比べて異次元の高みに達したと感心したりしておりました。この単純なフレーズならどこかで使えるかも知れません。
 よせばよいのに、シャラポアやフェデラーの真似をしたのが、筋肉痛の原因であることは言うまでもありません。TVの影響は甚大です。
 TV番組「あるある大辞典」の捏造は、科学性と番組制作の極めて重要な問題を投げかけていると思います。科学報道におけるマスメディア一般の病巣を露にしたと考えます。納豆に続いて、レタスの睡眠促進に関してもデータ捏造が行われたと報道されています。
 なんのことはありませんが、私も納豆には騙され、毎日1パック食べていた習慣に、番組後はもう1パックを追加していました。2倍食べても問題はありませんが、「納豆をかき混ぜて20分待たないと効果がない」という番組の解説を真に受けて、白糸が茶色に変色したまずい納豆を食べていたことを思い出すと苦笑せざるを得ません。素直な性格が災いしました。
 今回の事件の原因は、1)センセーショナリズムに安易に走るTV局、2)下請けのプロダクションに対するTV局の視聴率確保圧力と番組制作者の安易な姿勢、3)食の機能や安全に対する科学の未熟さ、4)安易にTV局におもねる科学者の倫理観のなさ、そして5)こうした番組を面白がり、信じてしまう私たちの愚かさ、また6)付和雷同し易い国民性などにも起因すると思います。
 しかし、納豆は悪質で、3週間で痩せるというボランティアを利用した実験を見せておりましたが、この3週間、毎日納豆を2パックも食べ続けることは普通の市民にはできないだろう、従って番組も検証されえないという、視聴者を馬鹿にした考えがあったのではないかと推測しています。
 食の機能の実験が動物実験さえなかなか難しく、更に遺伝的・ライフスタイルの多様性があるヒトでは、厳密な実験を行うことは相当な参加者の数を確保して、統計的に意味のあるプロトコールを設定し、実験中もモニタリングを欠かせないという努力が必要であることは言うまでもありません。10人足らずの視聴者がボランティアでやった実験など信ずるに足らないことは常識であります。
 と、大上段に構えることは簡単ですが、私も納豆2パックを試す気になり、納豆を求めて日暮れる四谷を徘徊したことも事実でもあります。あえて騙された視聴者の代表として言い訳すれば、たった2パックの納豆を毎日食べるだけで、万が一痩せることができれば、ラッキーである、程度の気持ちだったということです。決して信じていたとは思いません。あるある大辞典で紹介された機能性食材のブームが常に一過性であったことは、信じていた訳ではないという証拠です。
 これも言い訳に聞こえるでしょうが、科学的事実を確認するために、”追試”をしていたのかも知れません。今回の番組の不公正さは捏造が第一ですが、この手の番組が指摘した事実を、誰かが追試して、科学的に公知になっていない場合が多いことも大きな問題です。しかも、視聴者参加実験自体の条件が公表され、他のTV局が実証実験で追試をするという、ピアレビューの仕組みが働いていない。むしろ、他のTV局は番組を真似る(パクリ)ことが多く、無批判に誤った事実が広がる構造です。
 つまり、科学が真実に迫る仕組みが無く、TV番組では言いたい放題であるのです。きっと番組を見て、「なんとあほらしい」と嘆息した専門家も多かったのではないかと思いますが、その専門家の発言を伝える場所も機会も用意されていないという不公正さです。こうしたマスメディアの欠陥を正す作用がインターネットにあると期待しています。市民のインターネット識字率の向上を早急に我が国でも図るべきだと思います。勿論、インターネットにも怪しげな情報はうようよありますが、独占的な大メディアあるTV局が健全な懐疑心を麻痺させてしまうこととは対照的に、インターネットの多様な情報は、市民に健全な懐疑心を植え付け、自ら判断する個人を育てます。
 私ももっと早く、下記のサイトにアクセスしておれば良かったと反省しております。
http://www.ffcci.jp/cgi-bin/news/news.cgi?146
 最後に、米Pfizer社の全世界で1万人のリストラを受けて、愛知県にある我が国のファイザー中央研究所も閉鎖、370人以上の科学者が失職し、我が国の大学や企業と行っていた共同研究50件以上が打ち切られる可能性濃厚となってきました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/1564/ 
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/1644/
 最後に一つ。
 ある大新聞は、「我が国の研究所の効率が悪かったためリストラ」と書きましたが、これは全くの事実誤認であります。我が国のファイザー中央研究所は、全世界のPfizerグループの研究所で最も新薬のシーズを開発していた最優秀の研究所でした。ここ5年間で、開発に入ったもの31,臨床に入ったもの20,フェーズIIに入った新薬候補が6にも上っています。
 彼らの奮闘に敬意を示し、名誉を守るためにも、この真実を皆さんに知っていただきたい。日経バイオテクやBTJという私たちのメディアも勿論間違えることはあります。しかし、私たちの間違いは直ちに読者によってご指摘を受けることが出来ます。今後はマスメディアによる報道の真相にも注力、共に真実に迫る努力を重ねていきますので、どうぞ皆さんもご支援願います。
 どうぞ、今週もお元気で。
PS
 おかげさまで、残席10。部屋を大きくしたのですが、これ以上の増席は不可能です。
 2月16日午後1時から6時まで予定を東京で、DNAチップが診断薬として発展できるか? というテーマでシンポジウムを開催します。ぜひともご参加願います。
 昨年、米国食品医薬品局がイニシアチブを取って纏め上げた、マイクロアレイ品質管理プログラム(MACQ)の責任者を招聘することに成功しました。
 DNAチップのデータの互換性や施設間の変動、標準物質など、最先端の問題を議論します。診断薬開発だけでなく、複数の種類のマイクロアレイやDNAチップで解析したデータの互換性がどこまで可能かといった情報も開示される予定です。
 下記より詳細をアクセス願います。
PS
 今年からは、BTJ/HEADLINE/NEWSは月曜日は宮田、水曜日はBiotechnology Japan 編集長の河田、金曜日は橋本が担当します。3人で可能な限り、激変するバイオの今を皆さんにお伝えしたいと思います。
 私はこのほか、水曜日に個の医療メールで医療問題とテーラーメイド医療を、また毎月15日にはRNAiAlert MailでRNAiの先端を報道します。もし、私のバイオに関する独断と偏見、そしてスポーツ記事を読みたいと希望される方は下記からご登録願います。
 ○申し込みサイト
個の医療http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/p-med/index.html 
RNAi Alert Mail http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/RNAi/index.html
 また、記者の目・2007特集もどうぞアクセス願います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/1278/
 更に、53人のバイオのオピニオンの新春展望をまとめた特集も下記からアクセス願います。ものすごく参考になります。今年のバイオを占う上でも、どうぞ下記をご覧ください。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/1216/